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90式戦車の有効活用考えよ

Japan In-depth / 2020年6月10日 12時33分

90式戦車の有効活用考えよ


清谷信一(軍事ジャーナリスト)


【まとめ】


・他国は90式戦車を現役活用、陸自は大金をかけ10式を開発した。


・10式は防御力低く、クーラーない為真夏のNBC環境では戦えぬ。


・不要になる90式は海外輸出、もしくはモスボール保存すべき。


 


陸上自衛隊は本来90式戦車を改良して使い続ければいいものを、わざわざ大金かけて10式を開発、調達した。


90式は戦後第3世代にあたる戦車だが、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、スウェーデン、カナダ、デンマークなど多くの国は第三世代の戦車を近代化した3.5世代と呼ばれる戦車を使い続けている。


そもそも防衛大綱でも敵の機甲部隊が何個師団も揚陸してくるような本格的な着上陸作戦が起こる可能性は低いとしている。想定している主たる脅威は島嶼における紛争や、ゲリラ・コマンドウ事態、弾道弾による攻撃であって機甲部隊ではない。新型戦車の整備の優先順位は極めて低かった。


10式の新機能の多くは90式の近代化で間に合った。唯一できないのは重量低減だけだ。全国の主要国道の橋梁17,920ヶ所の橋梁通過率は44トンの10式が84%、50トンの90式が65%程度であり、多くの場所で使えるというのがセールス文句だ。だが90式は第3世代の戦車でも軽い部類だ。90式が通れない場所は他国の主力戦車も通れない。しかも陸自は105ミリ戦車砲を搭載し、戦車駆逐車ともいうべき8輪の16式機動戦闘車も導入している。


10式は軽量化、低価格化ありのために防御力を犠牲にしている。3.5世代戦車で当たり前のタンデム弾頭などに対する周囲360度の防御力はない。自慢の砲塔側面のモジュラー装甲は予算がなくて実はブリキのドンガラだけが装備されており、25ミリに機関砲の直撃にも妙案はないという。またトップアタックや地雷に対する耐性も低い。


10式には乗員用クーラーも装備されていない。陸幕も装備庁も乗員用クーラーを要求していなかったが、それではあんまりだという機甲科OBが働きかけて、三菱重工が裁量の範囲で機器冷却用のクーラーの力を上げて、乗員も多少はおこぼれに預かるレベルにあるというだけだ。だから新型戦車なのに真夏のNBC環境では戦えない。陸幕は夏場のNBCも環境下での戦闘を想定してないということだ。そのような平和ボケの組織がまともな装備開発ができるか疑いたくなるのは筆者だけではあるまい。


10式の開発には主砲、エンジンなどのコンポーネントの開発も含めて約1000億円が投じられた。更に66億円の初度費が使われている。調達単価は約10億円でこれまで約110車輌が調達されている。


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