バイデン政権、温暖化シフト【2021年を占う!】米・環境政策
Japan In-depth / 2020年12月28日 11時0分
■ 公約実施の度合いは上院次第
バイデン次期政権がエネルギー温暖化分野の選挙公約をどれだけ実行に移せるかは来年1月のジョージア州の2議席の帰趨に大きく左右される。ここで民主党が2議席ともとらない限り、上院の共和党過半数が続くことになり、巨額な財政支出や炭素税、排出量取引等の新法制定の可能性は大きく低下する。トランプ政権時代に凍結された緑の気候基金に対する拠出再開も難しくなろう。
そもそも今回の大統領選ではバイデン勝利となったものの、上院、下院では米国の主要メディアが報じていた「ブルーウェーブ」は生じず、共和党が予想以上の頑張りを示し、上院では過半数維持をうかがい、下院では民主党がかえって議席を減らす結果となった。このため議会の関与を必要とする温暖化政策の実施のハードルは上がったと言える。民主党関係者は2022年選挙で上院の過半数を奪還するとしているが、通常、大統領選後、最初の中間選挙では与党が負けるケースが多いため、楽観できない。
もちろん、議会の関与なしにできることも多い。トランプ大統領が行政権限で緩和、廃止した環境規制については、全く同じロジックで強化、復活が可能となる。またトランプ政権では連邦レベルを超えるカリフォルニア州の自動車燃費・排出規制を制限しようとしたが、連邦政府が州政府の野心的な行動を制約するようなことはなくなるだろう。
電力分野の2035年カーボンニュートラルを達成するため、オバマ政権が大気浄化法の枠内で実施可能として行政権限で導入したクリーンパワープランを復活する可能性もある。
しかしクリーンパワープランは大気浄化法の枠を超えた規制であるとしてオバマ政権時代に訴訟が頻発しており、バイデン政権が同様のことを行えばその繰り返しとなろう。リベラル派のルース・ギンズバーグ判事の死去を受けて保守派のエイミー・バレット判事が任命されたことに伴い、最高裁判事の陣容が保守6、リベラル3となったことがリベラル色の強い温暖化政策の実施を制約する可能性がある。
■ 米国はリーダーシップを示せるか
パリ協定復帰や気候サミットといった温暖化外交は議会の制約を受けないため、自由度が高い。この分野で米国のリーダーシップを誇示しようとするだろうが、そのためには単にパリ協定に再加入するだけでは不十分であり、他国にNDC(nationally determined contribution:自国が決定する貢献)の引き上げを迫るのであれば、米国自身もオバマ政権の2025年▲26-28%(2005年比)に代わる野心的な2030年目標を早期に提示する必要がある。
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