バイデン政権、温暖化シフト【2021年を占う!】米・環境政策
Japan In-depth / 2020年12月28日 11時0分
その裏付けとなる国内施策をどの程度、積み上げることができるか。上院が共和党過半数となり、予算や法律による対応が制限される場合、決して容易ではない。オバマ政権のときも▲26-28%はきちんとした裏付けを欠く数字であるとして共和党から攻撃されてきた経緯がある。
オバマ政権の気候変動外交の大きな特色は米中協力であり、パリ協定の合意はその成果と言えるが、あれから5年が経過し、米中関係は新冷戦と言われるほどに悪化している。温暖化関係者は中国に対して甘い傾向が強いが、議会が超党派で中国に対して厳しいポジションを示している中でオバマ時代のような米中協力が再現するかは疑問がある。
■ 日本への影響と課題
バイデン政権の誕生により、米国がEUと同様、温暖化防止に大きく舵を切ることは日本にも大きな影響をもたらすだろう。
トランプ政権のときは温暖化問題に前のめりなEU、温暖化問題を無視する米国の間で日本の実情を踏まえた現実的なエネルギー温暖化政策を追求することが可能であったが、バイデン政権の誕生により、相対的に日本が一番「保守的」と映る可能性が高い。
先般、新政権に近い専門家と意見交換する機会があったが、菅総理の2050年カーボンニュートラル目標を高く評価しつつ、2050年目標だけでは不十分であり、2030年のNDCの野心レベルをそれと整合的なレベルまで引き上げることが重要であると強調していた。
2030年のNDC改訂は米国にとっても大きな課題であり、「人の目標に注文つける前にまず自らの目標設定が先決だろう」と思ったものだが、米国の目標設定は現在検討が進んでいる第6次エネルギー基本計画やその結果として出てくるNDC見直しの動きにも間違いなく影響を与えるだろう。
バイデン政権に参加が予想される人々は石炭を非常に敵視しており、本年7月に発表された非効率石炭火力のフェードアウトや石炭火力輸出の厳格化を超える対応を迫ってくる可能性もある。OECD諸国のODA対象から化石燃料関連プロジェクトを排除する、OECD輸出信用ガイドラインを見直し、石炭関連の輸出信用を全面禁止にする等の議論を展開する可能性もある。
米国は日本にとって最重要の同盟国であり、温暖化を重視するバイデン政権との協力を模索していかねばならない。
温暖化防止に貢献する技術は原子力、CCUS(Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage:二酸化炭素回収・有効利用・貯留)を含め全て動員するというバイデン政権の考え方はともすれば再エネ、省エネのみに傾斜しがちなEUの原理主義的傾向に比べれば日本との共通点が多い。また小型原子力、CCUS等、イノベーションを重視している点でも日本と共通する。
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