バイデンの米国②親中的グローバル化に回帰【2021年を占う!】米国
Japan In-depth / 2021年1月13日 23時59分
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
【まとめ】
・バイデン政権の通商政策は「自由貿易を名乗らない自由貿易協定」。
・バイデン氏は「対中強硬」を装いつつ、グローバル化を復活を狙う。
・「対中関税緩和」等、バイデン氏は中国に親中姿勢である。
首都ワシントンで1月6日に発生したドナルド・トランプ大統領支持者による米連邦議事堂への乱入事件は死傷者が出る惨事となり、1月20日に就任予定のジョー・バイデン次期大統領の当面の注意は、コロナ禍や減速が著しい米経済、さらにトランプ大統領の罷免・訴追など内政問題に張り付くこととなった。
そのため、バイデン次期政権の通商政策に関する方針の表明は、先送りになる可能性が高まった。しかし、そもそも4年前のトランプ政権誕生の大きな要因となったのは、ボーダーレス化による雇用の流出や仕事の質の劣化による、国内情勢の不安定化だ。米議会への乱入事件も、大元をたどればグローバル化による白人中間層の没落が大きな役割を果たしている。
その意味で、米国が自由貿易を推進するのか、あるいは後退させるのかは、この先4年のバイデン時代、さらにはその先の米内政の安定を占う重要な要素となる。具体的には、世界で拡大する脱グローバル化の動きに次期政権がどのように対応するのか、それに関連してトランプ政権が開始した米中貿易戦争をどのように扱うのか、などが注目点となろう。
米労働者「保護」の方針
バイデン次期政権の当面の通商政策は、「自由貿易を名乗らない自由貿易協定」である米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA、前身である北米自由貿易協定【NAFTA】の後継)をひな形とする多国間通商を拡大する可能性が高いと筆者は見る。早い話が、トランプ政権の方針を継承する「トランプ2.0」だ。
たとえば、バイデン次期大統領が米通商代表(USTR)に指名した台湾系米国人のキャサリン・タイ下院歳入委員会通商担当首席法務官(中華名: 戴琪)は、そのUSMCA交渉において重要な役割を演じた人物だ。メキシコに、高い労働者保護基準を飲ませて同国の労働コストを吊り上げ、メキシコに流れていた米国の雇用の一部を再び米国に戻すという「自由度をいくらか弱めた自由貿易協定」の推進者であり、その手法をバイデン政権下の通商交渉にも使う可能性が高い。
これに、バイデン次期大統領の公約である「米国から海外に業務を移す企業に懲罰税を課し、米国内で雇用を創出する企業を優遇する」という税制改革を組み合わせ、ポピュリズムや極右台頭の大きな原因となった白人中間層の没落に対処する考えと見られる。
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