バイデンの米国②親中的グローバル化に回帰【2021年を占う!】米国
Japan In-depth / 2021年1月13日 23時59分
同時に、没落した中間層や低所得層がグローバル化に拒否反応を示していることは、バイデン氏もよく知っている。また、「中国がグローバル化で民主化する」というバイデン氏お得意の「関与政策」が破綻したこともあり、USMCAのような「自由貿易を名乗らない自由貿易協定」を追求する中で、目立たないグローバル化の巻き戻しを図ると筆者は予想する。それは、中国との啐啄同時(そったくどうじ)、阿吽(あうん)の呼吸という形で顕在化しよう。
まず、中国が主導する形となったRCEP(地域的な包括的経済連携協定)の合意を奇貨に、「中国に対抗するために必須のTPP」という言説を持ち出し、国内の脱グローバル化の動きを抑え込んでTPP復帰を果たし、グローバル化を復活させるだろう。表面的には「対中強硬」を装いながらも、運用上は中国の好むグローバル化のリバイバルを引き起こすことで、実際上はクリントン・オバマ民主党政権時代からの親中路線を継続できるわけだ。
とは言え、自由貿易やTPPに対する米国内の反発は根強い。そのため、オバマ前政権下で米通商代表部の元次席代表代行を務めたウェンディ・カトラー氏が示唆するように、デジタル貿易や医療品、気候変動などの分野で「ミニTPP」を成立させ、それらの集合体である「完全なるTPP」に最終的に統合するという世論工作のトリックを使うことが予想される。
またバイデン次期政権は、トランプ政権が欧州連合(EU)やフランスなど個別の加盟国に課した高関税を撤回することで恩を売り、これらの国々が米国主導の対中包囲網に積極的に参加することを期待しているとされる。
しかし、実際に米国が対欧関税を引っ込めたところで、中国を怒らせるような対中包囲網に欧州の同盟国が喜んで参加すると見るのは楽観的に過ぎよう。なぜなら、「米国か中国か」という二元論的選択はどの国にとっても回避したいものであるからだ。事実、中国とEUは12月に包括的投資協定(CAI)交渉の妥結に至ったばかりである。
リベラル国際主義のラストチャンス
バイデン氏による「自分は中国に対してソフトではない」との主張は、「グローバル化巻き戻し」「対中関税緩和」「実効性のない『対中包囲網』の形成」など、中国を敵国とすることを回避する、実質上の親中姿勢を隠すためのアリバイ作りと見ることもできる。
事実、中国の王毅外相はバイデン氏の当選後、「多国間主義は正しい道、グローバルガバナンスの強化と整備は必然的な流れ」と唱え、バイデン次期政権によるグローバル化の復活に対する期待をにじませている。グローバル化は、中国の経済的・軍事的台頭に不可欠であったし、覇権的な「中国の夢」「中華民族の偉大な復興」の実現には、親中的なグローバル化、すなわち自由貿易が引き続き必須なのである。
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