バイデンの米国②親中的グローバル化に回帰【2021年を占う!】米国
Japan In-depth / 2021年1月13日 23時59分
ただし、歴代米政権の通商政策の基本は自由貿易だ。クリントン・オバマ政権時代に金融のさらなる自由化、メジャーな自由貿易協定の相次ぐ締結など新自由主義的な経済政策を積極的に採用した「財界の味方」である民主党が、脱グローバル化に舵を取るとは考えにくい。事実、バイデン政権の組閣において、労働者側に立つ民主党左派はことごとく排除されている。
そのためバイデン新大統領は、リップサービス程度で効果の薄い「労働者の権利保護」を行いながらも、自由貿易という基本政策は変更しないだろう。グローバル化をストップすることは、富裕層や大企業とズブズブの民主党の権力基盤を壊すことだ。それを見越した米市場はイケイケの「バイデン相場」で応じており、米財界も安定をもたらすと期待されるバイデン氏への強い支持を表明している。
つまり、バイデン次期政権の「労働者保護」は、内実においてグローバル化で肥え太る富裕層や大企業の保護なのであり、他国労働者との競争にさらされる米労働者の立場は弱いままとなる。没落した白人中間層が、民主党首長によるロックダウン政策推進がもたらす失業や収入減でさらに困窮し、その結果として一部が過激化し、国内テロなどに走る可能性は低くないものと思われる。
バイデン次期政権は、米議会乱入事件の大元となったグローバル化による経済格差拡大を解決するどころか、逆に悪化させることにより、さらなる分裂と社会不安を引き起こすことになろう。米国の内乱による自壊が加速して高笑いするのは、中国の習近平やロシアのプーチンである。
中国との「阿吽の呼吸」
バイデン次期政権は、当初はトランプ政権の対中制裁関税を継承し、中国から譲歩を引き出すための交渉のカードに使う方針であるとされる。知的財産権問題や、中国の国営企業への過剰な保護などに対しては、それなりに強硬な姿勢で臨むものと予想される。
だが、バイデン次期大統領の基本的な立場は、一貫して自由貿易とグローバル化の推進であることに変わりはない。バイデン氏は親中の外交通上院議員として、中国の世界貿易機関(WTO)加盟に不可欠な役割を果たし、オバマ前政権の副大統領としては環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉を推進した。バイデン氏は、いわば「グローバル化の権化」であり、民主党は新自由主義を信奉する政党なのである。
▲写真 オバマ元大統領 出典:Image by janeb13 from Pixabay
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