続:身捨つるほどの祖国はありや
Japan In-depth / 2021年1月15日 22時51分
牛島信(弁護士・小説家・元検事)
【まとめ】
・自著読み、「日本が会社制度の中核に抱えた潜在的矛盾」に気付く。
・株持ち合いで会社の独立性尊重し合うのは日本全体の黙約に通じる。
・日本はどこへ向かうのか。祖国と未来の人々に少しは恩返ししたい。
表題は、去年11月に出た8冊目のエッセイ集(幻冬舎)である。その続きを、このサイトで毎月やらせていただくことになったので、「続き」とした次第である。
その本のまえがきに、私はこう書いた。
「『身捨つるほどの祖国はありや』と題した。寺山修司の1957年発表の短歌の一部で、上の句を「マッチ擦るつかの間の海に霧ふかし」という。
あの戦争が終わったときに9歳であった少年が21歳になったとき、祖国はそのように存在したのだろう。
だが、果たして祖国はあったりなかったりするのだろうか。
十人十色。私は日本について所与のものと思っている。気に入っても気に入らなくても、そこに生まれ、育ったのだ。選べるものではない。祖国とは先ずなによりも自分の家族である。
もちろん、時として祖国は身を捨てることを要求する。
要求?
しかし、戦艦大和に乗っていた21歳の青年はそう考えなかった(本書521頁)。
日本が「敗レテ目覚メル、ソレ以外ニドウシテ日本ガ救ハレルカ(中略)俺タチハソノ先導ニナルノダ」と自分に言い聞かせ、「日本ノ新生ニサキガケテ散ル マサニ本望ヂャナイカ」と自ら納得して死んだ。同じ頃の河合栄治郎の思いと共通する。(本書324頁)
日本の現在と未来は、その先にある。
祖国を、日本を、改めて考えなくてはならない時代になっている。新型コロナウイルスは、国以外に頼るものがないことを明らかにした。
しかし、ことはコロナだけではない。外側の世界から我々を守ってくれるものは、日本という祖国以外にない。そう思い知らされる日がついそこに来ている。戦後75年。思えば、安倍政権は嵐の前の長い静けさだった。」
▲画像 『身捨つるほどの祖国はありや』牛島信 著(幻冬舎)
日本に生まれ、日本語を母国語として育った私には、状況次第で祖国を選ぶという発想はない。この国に生まれ、たぶんこの国で死ぬ。それだけでも、生きている間に少しは祖国とそこに住む未来の人々に恩返ししたいと願っている。
日々をビジネス・ローヤーとして忙しく暮らしている一人の人間の月報といったところであろうか。
アメリカに住んでいるアメリカ人の友人から久しぶりに連絡があった。或るブッククラブのインタビューアーをしているので、お前の書いた小説とどうやってそこそこの法律事務所をやりながら、小説を書く時間があるのか、その他お前が今の時代について考えていることなどについて話をしたいと言う。オン・ラインでとのこと。もちろんと気軽に引き受けた。
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