パン屋、2代目の覚悟「ふじ森」代表藤森もも子氏
Japan In-depth / 2021年6月24日 10時47分
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
「今、あなたの話が聞きたい」
【まとめ】
・超高級“フランス食パン”を販売する「ふじ森」オーナーに話を聞く。
・「ギフト需要」を取り込み、コロナ禍にも負けず販売伸ばす。
・次なる夢はデジタルマーケティング。顧客満足度とブランド価値を引き上げ、パン屋の地位向上を目指す。
2019年12月。そのパン屋はオープンした。東京・目黒区、東横線の都立大学駅から歩いて3分。
開業と同時に客が数10メートル先の目黒通りまで並んだ。目玉は、フランス産最高級発酵バターを使用した究極の最高級食パン、一斤半3000円(税込み)の超高級“フランス食パン”だ。
高級食パンブームとは聞いていたが、ついにここまで来た。その名も「ふじ森」、店の名前をそのままパンに付けた。
オーナー藤森もも子氏はパン屋2代目。父はフランスの食文化に魅了され、約40年にわたり本場の様々なパンを研究、日本国内におけるパンとその文化を普及させた第一人者、藤森二郎氏だ。平成18年にはフランス農務省より農事功労章を、令和元年には厚生労働省より「現代の名工」に選ばれた。「株式会社ビゴ東京(BIGOT TOKYO)」代表にして、東京エリアに3店舗、神奈川エリアに3店舗を構える。
▲写真 藤森二郎氏 出典:ビゴ東京
その娘である藤森もも子氏。実は、もともとパン屋になることを目指していたわけではなかった。
▲写真 藤森もも子氏 ⓒJapan In-depth編集部
■ パン屋になる決意
生まれたときからフランスパンが当たり前の様に食卓にあった藤森氏。高校を卒業後、フランスの大学に留学したのは自然の流れだった。
「父は私に家業を継いでくれ、とかそういうことは一切言ったことがありませんでした。でも、フランスに留学したときとか全面的に支援してくれました。自分が日本に持ってきたフランスの食文化というか、そういうものに娘が触れることは嬉しかったのではないでしょうか」
フランスから帰国後、藤森氏はPR会社に就職する。2年半ほど夢中で仕事をした。やりがいもあったし、何より楽しかった。が、独立心がムクムクと頭をもたげてきた。会社を辞めて起業、しばらくはPRの仕事を1人でこなし、収入も増え、生活に余裕ができた。そんな時、パートナーから、家業について考えてみたら、とアドバイスを受けた。
「私はパン職人ではない。パンを焼くことは父にはかなわない。でもPRの仕事をやってきて、商品をどう売るかはわかっているつもりだった。じゃあ、自分で店を出してみよう、と」
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