中国とはどんな国家なのか その3 人権弾圧と影響工作の秘密
Japan In-depth / 2021年7月27日 7時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・中国政府は自国内での人権弾圧 / 影響工作に関する情報について完全な不透明、秘密性を保つ。
・外部の観察者は中国当局が人権問題とは別とみなしている分野の言動から人権抑圧の現実を知ることができる。
・外部での研究は、中国共産党の影響工作の内容・標的を正確につかんできたが、実際の効果についての評価がもっと必要。
中国という国家の透明性についての報告の紹介を続ける。
アメリカの大手研究機関のヘリテージ財団による「中国の透明性報告」の紹介である。
現在の国際情勢では日本もアメリカも中国という国家の本質を知ることは不可欠だといえよう。その中国もふつうに眺めていても、実態はなにもわからない。そもそも中国という国家は不透明だからだ。
この研究報告はその中国の不透明性についての詳細を知らせ、不透明な幕の内側にある現実の中国の姿に光を当てようとする試みである。
今回は「人権」と「影響工作」についての報告の骨子を伝えることとする。
【人権】
中国共産党は中国国民の国際的に認められた人権を保護することを怠ってきた一貫した記録を有する。歴代のアメリカ政権も中国の人権問題を軽視することが多かった。
一方、中国共産党は人権抑圧を中国の国家と共産党の両方の存続にとって中心的な課題とみなしてきた。自己の生存のためには国民の人権を抑圧せねばならないというメカニズムなのだ。
アメリカ側では時の政府が中国に対する総合的な戦略のなかで人権問題を軽視することは、往々にして対中政策の矛盾、さらに最悪の場合には対中戦略への阻害を招いてきた。
だからアメリカ側にとっては中国共産党の人権抑圧の慣行に対して透明性を促進することが必要となる。そのためにアメリカ側、さらに国際社会でも、非政府団体、非営利団体、法的支援組織、学界などが中国共産党の人権抑圧を隠そうとする幕を引き上げることにすでに努めてきた。だがまだなさねばならないことは多くある。
中国政府の人権問題に関するデータはみつけにくいし、歪曲されている。だが外部の研究者、活動家たちは中国内部の傾向に光を当てる方法をなんとかみつけてきた。
中国共産党政権は新たに発令する法律や条令についてオープンなこともよくある。2018年には宗教問題についての新たな規則を発令した。その規則は国民の個人の宗教的な言動を抑制するとは明言していないが、内容は国際的な宗教の自由の基準に違反していた。共産党当局はその違反をおそらく正確には理解しないまま、この国内規則を打ち出した可能性があり、外部の考察者にとっては中国の人権抑圧状況を知る有益な資料となった。
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