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官僚に数字合わせ強いる46%目標の愚

Japan In-depth / 2021年8月4日 11時0分

今回の46%目標は目標年限があと9年しかないにもかかわらず、しかも現行26%目標の達成度が道半ばであるにもかかわらず、フィージビリティやコストを考慮することなく20ポイントも上乗せするものである。そのマグニチュードは鳩山目標の比ではない。菅総理が46%目標を国際公約した時点で、検討中の第6次エネルギー基本計画が「数字合わせ」を強いられることは自明であった。筆者は「数字合わせ」を強いられた経産省の後輩たちに同情を禁じ得ない。数字合わせを批判されるべきは官僚よりも官僚にそのような作業を強いた政治家たちである。









▲写真 2030年度に向け温室効果ガス「13年度比46%減」目標を打ち出した菅首相。 出典:Yuichi Yamazaki/Getty Images





■ エネルギーミックスの問題点





今回のエネルギー基本計画では福島原発事故のトラウマにより、鳩山目標のときのように原発のシェアを拡大させることができない。そもそもあと9年で新増設などできるはずもなく、既存原発の再稼働により発電電力量に占める比率を20-22%に維持するのがせいぜいである。そうした中で46%を実現しようとすれば、省エネを目一杯積み上げ、再エネを目一杯積み上げ、化石燃料のシェアの引き下げしか方法がない。蓋をあければ案の定、そのようなものになった。省エネを大幅に強化した結果、昨年12月のグリーン成長戦略では脱炭素化に向けて電化が進み、電力需要が30-50%拡大するとされているにもかかわらず、2030年にかけて電力需要はほとんど伸びない。発電電力量に占める再エネのシェアは22-24%から36-38%に引き上げられ、石炭火力のシェアは26%から19%に、ガス火力のシェアは27%から20%に引き下げられた。





総合エネ調基本政策小委員会委員の橘川武郎国際大学副学長は今回のエネルギーミックスにつき、「ミスリーディングな数字が多い」と批判的であり、30日の日経新聞記事『電源構成、帳尻合わせ避けよ』の中で





①高く設定された再生可能エネルギー比率の実現性に疑問がある

②原子力20-22%実現の見通しが立っていない

③火力発電の比率が過度に抑制された結果、天然ガス投資・調達への悪影響を含め、エネルギー安定供給や電力コスト削減に懸念がある





等の問題点を指摘している。





■ 電力コスト上昇への懸念





筆者は数字の実現可能性もさることながら、電力コストへの影響を懸念する。再エネシェアの大幅拡大と石炭シェアの大幅引き下げは電力料金上昇をもたらすことは確実だからだ。素案では再エネ買取費用が第4次エネルギー基本計画で想定されていた3.7~4兆円から5.8~6兆円へと大幅に膨らむにもかかわらず、「再エネコストの低下とIEAの見通しどおりに化石燃料価格が低下した場合、電力コストは8.6兆~8.8兆円と現行ミックス(9.2~9.5兆円)を下回る」という数字が提示されている。





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