官僚に数字合わせ強いる46%目標の愚
Japan In-depth / 2021年8月4日 11時0分
■ 原子力新増設の議論は回避
菅総理が2050年カーボンニュートラル、2030年46%という目標を打ち出した際、「これを機会に長らくタブーになっていた原発の新増設、リプレース問題についても手を付けてほしい」と思ったものだが、残念ながらその期待は裏切られた。「原子力依存を可能な限り低減する」「安全性の確認された原発を再稼働する」という従来方針を維持し、新増設・リプレースには何らの言及もなされなかったのである。
「大幅に引き上げられた温暖化目標達成のためには原発の新増設、リプレースが必要である」と自民党リプレース議連、電力安定供給議連や産業界から強い働きかけがあったにもかかわらず、原子力についての方針明確化が見送られた理由は、閣内で小泉環境大臣、河野行革大臣の強い反対があったこと、公明党が強く反対したこと、差し迫った衆院選での争点化を避けたかったこと等があげられている。
第6次エネルギー基本計画は2030年のみならず、2050年カーボンニュートラルに続くロードマップとしての位置づけを有する。2030年ミックスの数字に新増設・リプレースを反映させることはできないとしても、2030年以降の脱炭素化への打ち手の一つとして原発の活用に言及できなかったことは不合理である。
バイデン政権の米国は脱炭素化に向け、小型原子炉(SMR)を含め、全ての技術オプションを追求する構えでいる。ドイツのように脱原発を志向する国もあるが、EU全体でいえば原発は引き続き活用される。
翻って日本は平地面積が少なく、海が深いため、欧米に比して経済的に利用可能な再エネ資源に限界がある。加えて隣国との連系線を有さないため、変動性再エネの統合コストが高くなる。中国の脅威が高まる中で、一次エネルギーの輸入依存度のみならず、エネルギー技術の自給率や戦略鉱物の対外依存度にも目を配らねばならない。
そうした中で日本が営々として培ってきた国産原子力技術にチャンスを与えないのは愚かでしかない。グリーンイノベーション戦略の中で原子力技術も重点分野とされているが、新設の見通しが立たないのであれば、民間企業が技術開発に意欲を感じるはずかない。3年後にエネルギー基本計画見直し時に議論を先送りしたことにより、日本の原子力産業、原子力人材はますます細っていくことになるだろう。
▲写真 小泉進次郎環境相 出典:Tomohiro Ohsumi/Getty Images
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