いまだ行われる生活保護費の水際対策
Japan In-depth / 2021年9月3日 16時0分
田中紀子(ギャンブル依存症問題を考える会代表)
【まとめ】
・ギャンブル依存症と精神遅滞の重複障害を抱えたKさん、短期入所施設にいたが、依存症回復施設への入寮か自活か、決断迫られ困惑。
・今はなんとかクリニック併設のギャンブル依存症回復施設に落ち着いた。
・国が困窮者に生活保護利用を呼び掛けているのに、役所が水際で申請却下や保護費打ち切りをすることがあるのは問題では。
●突然生活保護を打ち切る役所の担当者
メンタリストDaiGoの生活保護批判が大炎上したが、そもそも生活保護は国民の権利であり、必要な人には誰にでも行き渡ることになっている。また行政の担当者は生活保護という金銭支援だけでなく、申請に訪れる人が他に必要としている支援があれば、地域で連携してご本人を支える仕組みを作るべきだと思っている。
厚労省も昨今ではTwitterなどを駆使して、生活保護を必要とする人の申請をためらわないで欲しいと呼びかけているが、いまだ役所の窓口担当者は水際で申請を却下したり、保護費を打ち切りにするということを行っている。
私が、つい最近経験した事例をご本人とご家族の了承を得たのでご紹介したいと思う。生活保護のあり方や行政の対応について、考えて頂けるきっかけになれば幸いである。
Kさんは、ギャンブル依存症であり精神遅滞の重複障害を抱えていた。生活保護を受給し、掃除などはヘルパーさんの補助を得ながら一人暮らしをし、依存症の専門病院に通院していた。しかしグループミーティングなどの治療になじめず、ギャンブルが止まらない状態にあり、結局窃盗事件を起こしてしまった。前科もあったことから今度は実刑になるであろうと、困り果てたKさんの母親が、私たちの相談会に来られたことが最初の出会いとなった。
Kさんの母からは、精神遅滞の診断があるが、普通高校を卒業していること、コミュニケーションも可能であることが伝えられた。相談を聞き私からは「通院していても再犯してしまったので、出所したら回復施設に入寮するのがよいのではないか?」とアドバイスした。ご両親も施設入寮を希望しているとのことだったので、私が留置場に面会に行き、回復施設での生活が可能か判断し、大丈夫そうならばKさんを説得してみることにした。
Kさんは、留置場で言葉数は多くはないがコミュニケーションは問題ないように感じられたため、回復施設について説明すると、ご本人も出所後行くあてもないことから入寮に同意した。
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