60ミリ迫撃砲の有用性 前編
Japan In-depth / 2021年9月5日 15時30分
清谷信一(防衛ジャーナリスト)
「清谷信一の防衛問題の真相」
【まとめ】
・迫撃砲は歩兵部隊の支援火力として重用されている。
・特殊部隊や空挺部隊では、小口径の60ミリ迫撃砲が主流。
・陸上自衛隊も小部隊の火力支援に60ミリ迫撃砲を検討すべき。
歩兵部隊の火力支援には迫撃砲が重用されている。特に下車歩兵部隊においては60ミリクラスの軽量な迫撃砲が多用されている。陸上自衛隊でも近年オーストラリアのヒルテンベルガー社の60ミリ迫撃砲、M6C-210を採用している。
まずはざっくり迫撃砲の歴史と機能をおさらいしよう。迫撃砲、曲射砲は英語では共にモーター(Mortar)と呼ばれる。モーターは45度以上の仰角をかけて撃つ曲射砲を意味しているが、近代的なものは15世紀のオスマントルコで発明されたといわれている。その後は欧州を中心に普及していったが、要塞防衛用や沿岸防衛用の大口径のものが多くつくられてきた。
日露戦争で日本軍が旅順攻略で国内の沿岸砲台で使用していた28センチ曲射砲もモーターの一種だ。迫撃砲(Trench Mortar)はその日露戦争中に日本陸軍工兵隊が、打ち上げ花火の機構を真似て手榴弾を投擲するものをつくったのがその嚆矢とされているが、ほぼ現在の迫撃砲が登場したのは第一次世界大戦だった。
第一次世界大戦は短期決戦になるという大方の予想を裏切り、地上戦では互いに延々と欧州の東西にわたる塹壕を掘っての持久戦となった。この塹壕の奪い合いで有効な兵器ということで、多数の迫撃砲が登場した。
その中で登場したのが、ウィルフレッド・ストークスが開発したストーク迫撃砲である。ストーク迫撃砲は口径3.2インチの滑腔砲身と反動吸収用の底盤、二脚を持ち、砲口から下部に雷管を有した砲弾を装填する。これが現代の迫撃砲の祖となっている。ストークはこの発明により、サー(ナイト)の称号を授けられた。
▲写真 第一次世界大戦中に使用されたストーク迫撃砲 出典:Press Illustrating Service/FPG/Getty Images
迫撃砲は初速が低いが故に、駐退や複座機構が必要ない。それ故、構造が簡単で、重量も軽い。また生産も簡単でコストも安い。これらのメリットがあるため、各国で歩兵用の支援火力として愛用されてきた。
仰角を大きくとり、また精度が低いために直接照準射撃は出来ないが、障害物を越えて比較的近距離の敵を攻撃できることも歩兵には都合よい。
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