「エシカル」を通じて家庭科の新しい可能性を
Japan In-depth / 2021年9月5日 21時0分
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
Japan In-depth 編集部(坪井恵莉)
「今、あなたの話が聞きたい」
【まとめ】
・お茶の水女子大学附属高校葭内ありさ教諭、エシカルをテーマに家庭科で参加型の授業を展開。
・生徒に学んだことを発信させることで、より深い理解を促す。
・生活に身近な事柄を取り上げ、家庭科と科学の融合を目指す。
家庭科が中学・高校で男女必修となってから30年が経とうとしている。
家庭科と言えば、特に上の世代には、調理や裁縫など生活に必要な基本的スキルを身に付ける場という印象がもっぱらかもしれない。しかし今や、持続可能な社会の実現をはじめ、現代の生活に必要なあらゆる力を養う場となることが求められている。
シリーズ、「今、あなたの話を聞きたい」
今回はお茶の水女子大学附属高校で家庭科を担当する葭内(よしうち)ありささんに会った。同校は研究校として、時代に合わせた新たな授業づくりに取り組み、外部へ発信する役割を担っている。日々教壇に立ち生徒と向き合う葭内さんに、今の家庭科教育のあり方を聞いた。
■「エシカル」をキーワードに社会課題を学ぶ
「エシカル消費」という言葉をご存じだろうか。「エシカル(ethical)」は直訳すると「倫理的な」という意味で、人や社会・環境に配慮して生産された製品・サービスを選択する消費行動を指す。私たちが商品を選択する基準となる「安心・安全」、「品質」、「価格」に加えて、新たに「エシカル」という基準が社会に浸透することが期待される。
▲写真 ⒸJapan In-depth編集部
葭内さんは、この「エシカル」という言葉に10年前からいち早く着目し、家庭科の授業に取り入れてきた。高校1年次への授業では、エシカルブランド「CLOUDY(クラウディ)」とコラボし、2ヶ月かけてアフリカで用いられている布を使った製品のプロトタイプを考案する。優れた作品はアフリカの工場で商品化され、渋谷の店舗で実際に販売されるという本格的なプロジェクトだ。過去には子供用のワンピース、ミトン、エコバック、親子エプロンが商品化された。
従来の家庭科の授業では、全員が同じ作品を作るのが一般的だ。しかし、生徒の創造性をを重視し、まつり縫いなど複数の縫い方を使っていれば、何を作るかは生徒が自由に決める。「自分のペースで作ることができるから、生徒の満足度も高くなる」と葭内さんは語る。
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