英国もソ連も追い出した(中)「列強の墓場」アフガニスタン その2
Japan In-depth / 2021年9月20日 19時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
「林信吾の西方見聞録」
【まとめ】
・1979年暮れ、ソ連軍はアフガニスタンに「援助進駐」を開始。
・オサマ・ビン・ラディンはムジャヒディーンを支援する活動に乗り出した。
・やがて、アラブ人ムジャヒディーン一隊を率いて、ソ連軍相手に戦闘を繰り返すようになった。
シルベスター・スタローン主演の『ランボー』という映画は、1982年に公開されるや好評を博し、シリーズ化されたが、「回を重ねるごとにひどくなった」などと揶揄する声がよく聞かれる。とりわけ1988年公開の『ランボー3 怒りのアフガン』は、もはや冷笑の対象にすらなった。
第一作は、ヴェトナム帰還兵である主人公ランボーが、戦友を訪ねて行った先の、田舎町の警察に「浮浪罪」で拘束されるなど、理不尽な扱いを受けたことから、ついには怒りを爆発させて……という話だったのだが、2作目では、そのヴェトナムに潜入して捕虜となっている米兵を救出し、前述した第3作目でついに、侵攻してきたソ連軍に抵抗するアフガニスタンの人々に助太刀する。ご丁寧なことには、エンドロールで
「この映画をアフガンの勇者たちに捧げる」
とまで大書された。現実には、この映画が公開される直前に、ソ連軍はアフガニスタンから撤退すると発表したのだが。
まず、時計の針を70年ほど戻さなくてはならない。
前回も簡単に触れたように、1917年のロシア革命によって成立したソ連邦は、当初
「社会主義国家建設には取り組むが<革命の輸出>は目指さない」
といった外交姿勢を強調していた。さもないと当時の日本を含めた資本主義の列強が、革命直後の混乱に乗じて攻め込んでくるのでは……という危機感によるものであったことは、今や広く知られている。
そして第二次世界大戦後、ヨーロッパの軍事大国、具体的にはナポレオンのフランスやヒトラーのドイツによって国土を蹂躙された経験を踏まえ、俗に「第二国境線理論」と呼ばれる国防戦略を採用する。東ドイツやポーランドはじめ。ヨーロッパ大陸東部をすべて社会主義政権のもとに置き、ソ連邦本国が戦場となる事態をできるだけ避ける、という国防戦略で。東アジアにおける北朝鮮も、元をただせば同様の経緯で建国された。
そして、中央アジアにおいてもイスラム教徒が多く暮らす諸国を併合した上、同地域における交通の要衝であるアフガニスタンに、またしても関心を寄せるようになったと考えられている。
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