地域医療機能推進機構の役割を問う
Japan In-depth / 2021年9月27日 23時0分
私が、JCHOや国病の名前を挙げるのは、公衆衛生危機に対応することが、このような組織の設立理由だからだ。例えば、JCHOの設置根拠法の第21条には、以下のような記載がある。
「厚生労働大臣は、災害が発生し、若しくはまさに発生しようとしている事態又は公衆衛生上重大な危害が生じ、若しくは生じるおそれがある緊急の事態に対処するため必要があると認めるときは、機構に対し、第十三条第一項第一号又は第二号に掲げる業務(これらに附帯する業務を含む。)に関し必要な措置をとることを求めることができる。」
そして、厚労大臣の要請に対しては、
「機構は、厚生労働大臣から前項の規定による求めがあったときは、正当な理由がない限り、その求めに応じなければならない。」と応召義務を規定している。
このような規定が存在するのは、小泉政権下で一旦は決まった民営化の方針を、民主党政権下で変更するときに、厚労官僚や関係者が組織存続のお題目として掲げたからだ。JCHOの前身は、全国社会保険協会連合会・厚生年金事業振興団・船員保険会が運営する病院だ。スタッフは、そのまま移行しているから、どのような体質の組織かは容易に想像がつくだろう。
公衆衛生危機に対応するというお題目は、関係者にとって都合がよかった。JCHOは、発足時には土地・建物が無償で供与され、854億円の政府拠出金まで提供されている。法人住民税などは免税だ。理事長および常勤の理事4名のうち、尾身理事長は元医系技官、二人の理事は法令および医系のキャリア官僚の現役出向だ。
コロナ対策でも、JCHOには巨額の補助金が注ぎ込まれている。2020年度の総額は324億円で、前年度から194億円増だ。このうち、コロナ名目は235億円だ。多くの国民は、このような補助金がコロナ対策に用いられていると考えているだろう。ところが、実態は違う。2020年度、JCHOの診療業務費は3,546億円で、前年度の3,534億円から12億円(0.3%)しか増えていない。人件費に限っても1,851億円から1,877億円に26億円(1.4%)増えただけだ。
では、残りはどうなっているのだろう。収益として計上されているのだ。2020年度の純利益は201億円で、前年度の32億円から169億円も増加している。2020年度末のJCHOの現預金は688億円、前年度から有価証券を130億円買い増している。JCHOは、コロナ対策として支払われた補助金を収益として貯め込んでいることがわかる。
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