地域医療機能推進機構の役割を問う
Japan In-depth / 2021年9月27日 23時0分
近年、JCHOからは多数の不祥事が報告されている。2017年10月には桜ヶ丘病院で、必要以上の当直医を配置し、診療実態がほとんどない医師に給与を支給していたことが発覚し、病院長が諭旨解雇。2019年1月には、福井勝山病院の前薬剤部長が2,700万円を横領し、懲戒解雇。2020年3月には可児とうのう病院の経理課長が、電子カルテ納入に関する不透明な資金のやりとりで懲戒処分を受けている。この病院は、昨年12月から今年1月にかけても、本部の許可を受けず、約290万円の電子カルテ端末を調達していた。勿論、これらの不祥事は氷山の一角だろう。知人の厚労省関係者は「多くの不祥事は、表面化する前に内々で処理する」という。繰り返すが、JCHOの前身は社会保険庁だ。このような組織が、巨額の補助金を貯め込めば、どのような行動をするかは容易に想像がつく。
話をコロナ対策に戻そう。では、どの程度の患者を受け入れていたのだろうか。JCHOは患者受け入れの実態を公表していない。筆者が知人の政府関係者から入手した情報によると、JCHOが都内で経営する5つの病院の総病床1,532床のうち、コロナ病床は158床で、全体の10.4%に過ぎない。8月6日現在の受け入れは111人で、コロナ病床稼動率は70%、総病床の4.5%だった。
これは、9月6日、日本テレビがスクープした、都内の172病院の受け入れ状況と同程度だ。8月31日時点で都内の確保病床は5,967床だったが、受け入れ患者は4,297人で、病床使用率は72%だった。
▲写真 緊急事態宣言下の渋谷スクランブル交差点(2021年8月16日) 出典:Photo by Yuichi Yamazaki/Getty Images
公衆衛生危機に対応すべく設立されたJCHOと、一般病院のコロナ患者受け入れの平均が同レベルであるというのは、常軌を逸している。8月2日には、厚労省が病床逼迫を理由に、中等症以下を自宅療養と打ち出している。巷に感染者が溢れ、大勢が自宅で亡くなっているのに、JCHOは空床を抱えて何もしていなかったことになる。なぜ、こんなことになるのだろうか。
これは現場の医師・看護師に責任はない。普段からJCHOは各病院に経営改善を言明している。JCHOのHPには、各病院の収支が記載されている。本部から経営改善を求められれば、病院長がまずやることは、コストカットだ。医師や看護師の人数も抑制される。これで手間のかかるコロナ感染者を受け入れろと言われても、現場はどうしようもない。コロナ対応をするなら、非常勤でいいので、医師や看護師を確保すべきだ。コロナと「戦争」するなら、「予備役」を招集しなければならないのは当然だ。そして、その役割を担うべきは、尾身氏をはじめとした本部職員だ。
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