10式戦車の調達は陸自を弱体化させるだけ(中)
Japan In-depth / 2022年1月12日 23時21分
清谷信一(防衛ジャーナリスト)
「清谷信一の防衛問題の真相」
【まとめ】
・10式戦車はゲリラ・コマンドウ対処を軽視。RPG7、地雷、IEDに対する防御力がほとんどない。
・来年度の調達単価は目標価格の約2倍の13.7億円に高騰。
・10式はクーラーも装備せず、夏場のNBC環境下では役立たず。まさか人民解放軍が配慮するとでも?
陸上自衛隊・防衛省は、10式戦車はゲリラ・コマンドウ対処にも必要不可欠だと説明しているが、それは10式導入のためのセールストークに過ぎない。
それは10式が、90式と同等以下の調達コストと、40トン以下の重量で北海道以外でも運用できます、という3.5世代戦車ではありえないことが「できました」ということだ。つまりは「格安軽量戦車」だがそれは工学的に不可能だ。
そのセールストークのために、はじめから安普請にならざるを得なかった。このためその実態はゲリラ・コマンドウ対処を軽視したものになっている。3.5世代戦車としては落第で、単なる税金の無駄使いで終わっている。喜んだのは陸幕と新兵器という新しい玩具が大好きな軍オタぐらいだ。
10式は防御力が弱く、ゲリラ・コマンドウ対処での主たる脅威であるRPG7や対戦車ミサイルなどの携行型対戦車兵器、地雷やIEDなどに対する防御力が殆ど無い。10式は諸外国の3.5世代戦車にあたるが、車体及び砲塔の正面こそ複合装甲を採用しており、自分の主砲に耐えられる防御力を有している。だが、それ以外の部分は鋼鉄製の薄い、せいぜい数センチ程度の圧延装甲板であり、防御力は90式戦車と大差はない。実際に陸幕の要求は90式以上か同等というものだ。そして同等となっている部分が多い。
▲写真 10式のスカートは90式と同程度で極めて薄い(著者提供)
だがイラクやアフガニスタンでの戦車の主たる被害は地雷やIED(Improvised Explosive Device:即席爆発装置)、それにPRG7などの対戦車兵器だ。
昨今の対戦車兵器はタンデム弾頭を有している物が多く、これだと単なる鋼板の装甲はもちろん、反応装甲などの付加装甲があっても貫通する。また戦車の直前でホップアップして、一番装甲の薄い砲塔や車体上部、エンジンルームなどを狙ってトップアタックをかけるタイプの対戦車ミサイルも多い。市街戦で建物の上層階や屋上からこれらの対戦車兵器で狙われたらお終いである。
このため諸外国の3.5世代戦車は第3世代の戦車に多くの増加装甲を付加し、またネットワーク機能を付加した3.5世代の戦車を使用している。これらは側面や後部はもちろん、上部、車体下部迄文字通り360度の防御力を強化している。これを「動くトーチカ」として使用している。このため戦闘重量は60~70トンほどまでになっている。
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