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自民党に安全保障の当事者能力はあるのか

Japan In-depth / 2022年6月4日 18時0分

自民党に安全保障の当事者能力はあるのか


清谷信一(防衛ジャーナリスト)





 


【まとめ】


・小野寺氏の防衛装備品調達価格の国会質問に驚いた。統廃合や調達の合理化もせず防衛費増額を目指すとは。


・政府は防衛装備品メーカーの統廃合を促せ。欧州は勿論、ロシアや中国ですら実行している。


・岸防衛大臣の健康不安も問題。安全保障を軽視し、党内政治を優先する政府与党が安易に「借金軍拡」を目指すのは極めて危険。


 


5月26日の国会中継を見ていて小野寺五典元防衛大臣の質問を聞いて筆者は驚愕した。


小野寺議員は「我が国の防衛費は横ばいだが中国などは増やしている。装備調達は高騰しており以前と同じ予算では手当できない」と防衛費の増額を訴えたが、その時74式戦車と最新型の10式戦車の調達単価の載っているフリップをだして「以前の戦車が新しい戦車に替わると値段は3倍以上の金額になる」と力説した。



写真)衆院予算委員会で質問する小野寺五典元防衛大臣(2022年5月26日)


出典)衆議院インターネット審議中継ホームページ


だが調達価格約4億円の74式戦車の後継は90式戦車だ。そしてその後継である10式戦車の調達単価は当初10億円で90式と同じで、現在は14億円だ。それだと値上がり率で「不都合」があったのだろう。


因みに74式戦車が導入された翌年75年の防衛費は約1.34兆円に過ぎない。対して前年度の補正予算とパッケージ化された本年の防衛予算は約6兆円であり、その約4.5倍だ。これを「横ばい」と強弁するのは無理があろう。因みに74年当時はあんぱんが25円の時代だった。


また小野寺議員は(P-3CからP-1になって)哨戒機の調達単価は2.6倍と述べている。また空自のF-2が共食い整備(他の機体から部品を外して他の機体に使用)を余儀なくされていると述べた。これは海自が自ら高コスト哨戒機を選んだ結果だ。米海軍ですらコストの低減のために大量生産されている旅客機737とそのエンジンを流用したのに、海幕は機体、エンジン、ミッションシステムすべてを国産化するという「贅沢」にこだわった。



写真)富士総合火力演習に参加した空自F-2戦闘機(2022年5月28日 東富士演習場)


出典)Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images


採用当時の石破茂防衛庁長官はこの高コスト哨戒機に断固反対したが海幕に強硬に押し切られたという経緯がある。その当時からP-3Cですら当時から共食い整備が恒常化していた。


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