自民党に安全保障の当事者能力はあるのか
Japan In-depth / 2022年6月4日 18時0分
仮に現用のP-3Cの主翼を交換すれば機体寿命は新品同様になる。システムだけを入れかえれば遥かに安価についたはずだ。実際にP-1の高い調達、運用コストもあって導入が進まず、海自はP-3Cを延命化して使用している。
F-2の共食いにしても他国の何倍も調達運用コストが高いC-2輸送機を導入し、あまつさえ電子専用の派生型まで導入したり、調達単価23.75億円のはずの次期救難ヘリを事実上の「官製談合」で採用して50億円を越える単価で調達するなどの乱脈が原因だろう。
更に申せば、第二次安倍内閣の防衛大臣時代にはオスプレイの導入を決定している。MV-22オスプレイは「競合機」がアグスタ・ウエストランド(現レオナルド)のAW609だが、これはビジネス機であるし、当時完成もしていなかった。同じ入札でトラックと軽自動車を競わせるようなもので、初めからオスプレイ導入ありきだった。
オスプレイが陸自に17機配備されるが、その調達費用3,600億円はおおむね陸自のヘリ調達予算の10〜12年分だ。1機当たりの整備費は年間約10億円といわれており、17機ならば170億円だ。対して陸自のヘリの整備予算は年間220億円程度にすぎない。オスプレイが揃えばその3分の2を食うことになる。そうなればただでさえ不足している維持整備費は逼迫を免れない。実際に既に陸自のヘリの整備費や訓練費用は減っている。その責任はオスプレイの導入を決定した小野寺議員にあるのではないか。
防衛費が横ばいで、高額化する新装備の調達が困難になるのはどこの国の軍隊でも直面している話だ。他国では、例えば、陸軍の人員を大幅に削減する、不要になった装備を退役させる、基地を統合して不要な基地を閉鎖するなど、浮いた予算を近代化に振り向けている。これは世界の軍事予算の半分を使う米軍も、また小野寺議員がその軍拡を批判する中国もやっている。
(資料1)
資料1)1996年以降の陸上自衛隊と中国陸軍との体制比較
出典)財務省「防衛(参考資料)2022年4月20日」
ところが我が国では陸自の兵力削減も基地の閉鎖も行われず、3自衛隊の予算配分の見直しも行われてこなかった。小野寺議員は第1次安倍内閣で1度、第2次安倍内閣で2回防衛大臣を務めている。その間小野寺議員は防衛大臣として適切な政策を行い、決断を下したのだろうか。
NATO諸国も中国も基本的にGDPに比例して軍事費を増やしている。ところが、自民党政権は他国が当たり前にやっている政策も努力もせずに、安易に借金で大幅軍拡をやろうとしている。(資料2、3)
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