参院選から見えた沖縄政治の迷走
Japan In-depth / 2022年7月22日 23時0分
目黒博(ジャーナリスト)
「目黒博のいちゃり場」
【まとめ】
・参議院議員選挙の沖縄選挙区では、保守派と「オール沖縄」派の両陣営が抱える問題が露わになった。
・選挙結果は、保守派の候補者選考のもたつきや基地問題への態度と、政党間の支持率の差、「台湾有事」への危惧が相まって、「オール沖縄」の伊波洋一氏が当選した。
・今後、オール沖縄派は県民の声に耳を傾け、東アジアにおける同県の役割など沖縄社会が抱える課題を把握する必要がある。
7月10日に実施された参議院議員選挙の沖縄選挙区で、3,000票弱という僅差で「オール沖縄」系伊波洋一候補が勝利した。保守系の古謝玄太候補が優勢との大方の予想を覆す結果であったが、同時に、両陣営が抱える問題が露わになった選挙でもあった。
まず、保守派の敗北の原因と、同陣営が抱える構造的な問題を見てみよう。
<候補者選考のもたつき>
今回の選挙では、保守系の候補者選考は難航し、結論が出たのは3月6日であった。ここまで遅れたのは、自民党県連が前宜野湾市長の佐喜真淳氏にこだわったからである。知事選を目ざす同氏が参院選出馬を最後まで拒否し、急遽、総務省出身の古謝玄太氏に白羽の矢を立てることになった。
古謝候補は、高校卒業後、20年間沖縄から離れていたうえに、投票日までわずか4か月という、無名の新人には極めて厳しい短期戦を強いられることになった。
候補者選考の迷走は、自民党県連のまとまりの無さと、長期的にリーダーを育ててこなかった組織の体質が露呈したとも言える。
<「辺野古問題」という地雷原>
同氏は、選挙公約の中で、普天間基地の辺野古移設「容認」を打ち出す。60%前後の県民が、今なお辺野古移設に反発している状況を考えると、冒険だったのではないか。
実は、この方針は政府と自民党本部が強く主張し、同氏は党公認候補としてその意向に従ったのだ。今年行われた県内の市長選挙で保守系が4連勝したことを受けて、保守陣営内で盛り上がった強気ムードが「容認」を後押しした面もあった。
各種調査によれば、今回の選挙の最大の争点は、基地問題ではなく、経済や生活だった。辺野古「容認」が当落の決定的な要因ではなかったと見られるが、影響が全くなかった訳でもない。僅差での落選という結果を考えれば、小さなマイナスも無視できない。
辺野古問題は沖縄の保守系にとっては長らく鬼門であった。辺野古を抱える名護市の渡具知市長が、本年1月の市長選で、保守系でありながら「容認」を公言せず、「国と県の推移を見守る」としたことは、この問題の扱いにくさを示している。
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