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「#本物の国葬」にも一理ある(上)国葬の現在・過去・未来 その5

Japan In-depth / 2022年9月26日 18時0分

 念のため述べておくと、私はこうした一部ネット民の言動をよしとしているわけでもなんでもない。ただ、侵略戦争や植民地支配の歴史というものは、そう簡単に清算できるものでもないし、単に「お葬式の時くらい静かにしていろ」で済まされるものでもないと考えているだけだ。


 後者については、項を改めてもう一度見るとして、本稿ではタイトルの通り、どうして私が「#本物の国葬」という表現を全否定しないのか、その理由について述べさせていただこう。


 まず、英国は成文憲法さえ持たない国なので、この表現が適切かどうか迷うところだが、記事の趣旨に則してあえて言うなら「法的根拠」の有無という問題がある。



写真)エリザベス2世女王の国葬(2022年9月19日 英・ロンドン)


出典)Photo by Karwai Tang/WireImage


 英国では、国王が逝去した場合は国葬となるが、他に「特別な功績のあった臣下」が国葬に付される場合もある。本シリーズですでに見た、わが国の「国葬令」はこれに倣ったものかとも思われるのだが、よく分からない。と言うのは、大日本帝国憲法も、女性天皇の即位を認めない皇室典範も、基本的にドイツ(=プロイセン)の法体系に倣ったものだからである。


 ただ、昭和天皇も皇太子時代に訪英するなど、わが国の皇室と英国王室が昔から親密な関係であったこともまた事実であるし、そもそも19世紀から20世紀にかけては多くの国が王国あるいは帝国と呼ばれる体制にあったので、国葬に関わる法規が英国の専売特許であったとも考えにくい。いずれにせよ、まだまだ私の勉強が追いついていない点は、読者にお詫び申し上げるしかない。


 戦争で敵味方になった話はどうなのか、と言われるかも知れないが、こちらは自信を持って答えられる。昭和天皇が崩御された日、私はロンドンで働いており、現地での報道によって、終戦の際に英国、オランダ、ノルウェーの王家が、連合軍最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥に対して、昭和天皇の助命嘆願を行ったことを知ったからだ。敗者や弱者には寛大であれ、というのは騎士道の一環である。


 もちろん昭和天皇が戦犯として訴追されることを免れたのは、占領軍=戦勝国側の高度な政治的判断のたまものだが、日本の皇室が英国王室に恩義を感じるべき理由はある。



写真)エリザベス2世女王の国葬に参列するにあたり、記帳される天皇皇后両陛下(2022年9月19日 英・ロンドン)


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