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アベノミクスによる財政拡大の行方

Japan In-depth / 2022年10月10日 11時57分

総理を退いたといえども、自民党内の最大派閥の長である安倍氏は、アベノミクスの成功を主張し、「日銀は政府の子会社」「紙幣はいくらでも印刷できる」(編集部参考)などと発言して、その更なる拡大のために積極財政を続けることを主張してきた。


国債をいくら発行しても金利がかからないために、政治家も有権者も政策にコストがかからないと認識している状態となっている。だが一人日銀だけが金融緩和を続ければさらなる円安となって、日本経済が大打撃を受けるだろう。将来利上げを行えば、それは国政に大きな影響を与える。金利が1パーセント上がると、国家予算の国債費が約5兆円増えて30兆円になると財務省は試算している。これは国債費が現在の国家予算の四分の一から三分の一まで拡大することを意味する。


このような財政状況にも関わらず、安倍氏は「強い日本」を目指して、防衛費を現在のGDP比1パーセントからNATO諸国が目標とする2パーセントまで引き上げると主張、その財源は国債で賄えばいいと主張してきた。自民党に強い影響力を持つため、昨年発足した岸田内閣も9月の衆議院選挙の公約で防衛費GDP比2%を公約に掲げた。


だがこの公約はかなりいい加減なものだった。自民党の防衛大臣経験者は、「防衛費のGDP比2パーセントといっても、それが我が国の算定基準なのか、NATO基準を採用するのか決めていなかった」と証言する。2021年度の防衛費のGDP比は国内算定基準では0.95%、NATO基準で1.24%と大きく異なる。


筆者は昨年選挙後に、何度か防衛省の記者会見で安倍氏の実弟である岸信夫防衛大臣に自民党の公約は国内算定基準とNATO基準のどちらを取るのかを何度か質問したが、岸大臣は明確に答えられなかった。その後政府はNATO基準を採用する方向となっている。


安倍氏の主張には具体的な政策がなく、単に国債発行で防衛費を倍加すれば国防が全うできるという極めて危ういものだった。そしてそれを最大派閥である安倍派、自民党の国防族への影響力を行使して岸田政権に実行を迫っていた。だが国債発行による軍拡に対して岸田首相は消極的であり、自民党内部、そして財務省にも否定的な意見が強い。


日本では中国の軍拡が問題になるが、中国はGDPの拡大に比例して軍事費を増大しており、「健全」である。仮に国債で防衛費を増やしても長続きしないし、財政赤字がさらに悪化した状態で戦争になれば、起債して外国から資金を調達することは不可能になる。財務省もそのことを心配する声が大きい。


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