アベノミクスによる財政拡大の行方
Japan In-depth / 2022年10月10日 11時57分
現状を見る限り、安倍氏暗殺を受けて、その影響力がなくなり、防衛力増強は財源が確保できる範囲で行うというコンセンサスが形成されつつあるように見える。安倍氏暗殺後、同氏の統一教会の癒着が多くの国民の知るところとなって、安倍氏の政策を継承すると明言した岸田政権、自民党は大きな批判を受けている。
安倍氏の負の遺産はまだある。それは財政規律の無視である。第二次安倍政権から防衛省を含む中央省庁の次年度概算要求において「事項要求」が用いられることになった。「事項要求」とは特定の政策の予算金額を明記せず、項目だけ示すというものだ。防衛省概算要求では主として米軍関連費用などに使用さていた。それは数千億円にのぼる。
2020概算要求は、防衛省概算要求は5.3222兆円であるが、「事項要求」は2445億円以上の米軍関連費用が除外されていた。概算要求金額と事項要求の金額をあわせれば、その金額は5.5727兆円、すなわち実際の概算要求は約5.6兆円弱である。2201~2022会計年度に関して明確な事項要求金額は明示されなくなった。そして2023年度の防衛省概算要求では岸田政権は「事項要求」の枠を大幅に拡大している。
通常部分の概算要求は5.5946兆円として、それ以外の広範囲な分野で「予算編成過程における検討事項」を「防衛力を5年以内に抜本的に強化するために必要な取組み」を「事項要求」とするとして、広範囲に「事項要求」が用いられることになった。これは本年度末までに策定される、いわゆる防衛三文書、即ち「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」が策定途中であるためと説明している。このような手法は生前の安倍氏の影響力が強く反映されていると思われる。
更に第二次安倍政権以降、次年度予算と当年度の補正予算が一体化して予算の不明瞭化を招いた。本来補正予算は予算編成時に想定していなかった事態が起きた場合に、それに対処すべきための予算である。例えば今年のウクライナ侵攻や円安による燃料費の高騰を手当するなどである。このため迅速に執行するために予算化までのプロセスは本予算よりも簡略化されている。
だが第二次安倍政権以降、特に防衛予算では本来本予算で要求すべき、航空機や車両などの装備を大量に補正予算で調達しており、第二の防衛予算と化している。これは防衛予算の不透明化を招いている。
岸田政権も2022年会計度予算と2021年会計度の補正予算を一体化し、これを「防衛力強化加速パッケージ」と称している。2021年度補正予算7738億円だが、その内本来の補正予算の趣旨に沿うものは、原油価格の上昇に伴う燃料費の増額384億円等、計409億円だけだ。つまり7738億円中、7329億円は航空機や弾薬、施設建設など本来の補正予算の趣旨を外れた「お買い物予算」である。
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