円楽死すとも落語は死せず(上)娯楽と不謹慎の線引きとは その1
Japan In-depth / 2022年10月20日 18時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・噺家・六代目三遊亭円楽師匠が9月30日、肺がんで世を去った。享年72であった。
・円楽師匠の最大の功績は、落語会の門閥や所属組織の壁を取り払い、日本にしかない話芸を一致団結して盛り上げて行こうという気風を生み出したこと。
・円楽師匠を「笑いで送ろう」という番組は、断じて不謹慎ではない。落語の道に人生を捧げた人を「笑いで送る」のはこの上ない供養だろう。
「3日前に知らされたばかりで、僕自身まだ整理ができていなくて……」
10月9日午後5時半から日テレ系で放送された『笑点』の冒頭、司会者の春風亭昇太師匠は、このように語った。
この番組でも45年間レギュラーをつとめ、国民的な人気を誇った噺家・六代目三遊亭円楽師匠が9月30日、肺がんで世を去った。享年72。
かねてから肺がんを宣告されていた上に、今年初めには脳梗塞で倒れ、8月にようやく高座に復帰したのだが、今さら気の毒ながら、滑舌など見る影もなかった。それでも、
「みっともないと言われようが、死ぬまで(落語を)やります」
と語る姿には、それこそ「見るも涙のうれし泣き」というやつで、内心、望みは薄いと分かっていながら、なんとか回復して圓生を次いで欲しい、と強く願ったものだ。
ちなみに円楽も正確には「圓楽」と表記するべきだが、活字メディアでは一般に円楽とされているので、本稿でもそれに倣う。
話を戻して、昇太師匠が訃報を受け取ったのが3日前というのは、おそらく収録が4日前後に行われた、ということなのだろう。
そして9日、いつもの時間の『笑点』ながら、この日は「ありがとう円楽さん」と題した特別版が放送されたのだが、最古参・最年長の林家木久扇師匠が冴えに冴えていた。
まず冒頭の挨拶で、
「円楽さんは、あちらの世界へ行ってしまって、早速、歌丸師匠と口げんかを始めていると思います。私はけんかが嫌いなので、当分あちらへは行きません」
と言い、拍手喝采であった。
お題の中でも、円楽師匠の録音で、「修行が足らん!」と一喝されたらどう答えるか、という問題に、
「80歳を過ぎた先輩に向かって修行が足らんとは、コンプライアンス的にどうなんだ」
と意表を突く答え。
それにとどまらず、隣に座っていた林家たい平師匠が、
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