円楽死すとも落語は死せず(上)娯楽と不謹慎の線引きとは その1
Japan In-depth / 2022年10月20日 18時0分
この両派に、三遊派から分かれた三笑派を加えて、江戸落語の三大流派と呼ばれている。
林家や桂はどうなのか、と思われた向きもあろうが、三派ともに分派・別派が生じた歴史があり、三遊派からは三遊亭の他に古今亭が生まれたし、柳派からは春風亭が、三笑派からは林家がそれぞれ生まれている、という具合だ。
この「~亭」「~家」という名称を亭号と言い、誰かに弟子入りした者は、必ず師匠と同じ亭号を名乗る。芸名は一般に師匠が名づけるが、近年では真打ち昇進に際して新しい亭号や芸名を自分で考える例も、少数ではあるが見受けられるようになった。
上方落語の世界では「~派」とはあまり言わずに「~一門」と呼ぶが、桂一門と笑福亭一門が特に有名だ。江戸落語でも一人の師匠に従う弟子たちを一門と呼ぶことは多い。
また、桂一門は江戸にも根を下ろしており、先代の『笑点』司会者だった桂歌丸師匠と、本年1月より大喜利メンバーとなった桂宮司師匠はこの流れである。
亭号を変えるケースは、前述のように真打ちとなって弟子を取り、新たな一門を立てた場合の他、まれではあるが、破門されてしまった場合もある。
桂歌丸師匠の場合、もともとは五代目古今亭今輔師匠の弟子で「古今亭今児」という名前であった。ところが、今輔師匠が新作派であったのに対して、古典落語に執着し、最終的には破門同然で落語会から追われてしまった。
やむなく化粧品のセールスマンなどで生計を立てていたが、その才能を惜しんだ兄弟子たちの肝いりで、あらためて桂米丸師匠に弟子入りすることが叶ったそうだ。
立川談志師匠の場合、五代目柳家小さん師匠のもとで真打ちまで昇進したのだが、昇進の基準などをめぐって師匠(というよりは落語協会=後述)と対立し、ついには破門。そして自ら落語立川流を立ち上げて「家元」を名乗った。
上方落語の場合、ほぼ全員が上方落語協会の傘下にあるのに対し、東京では落語協会、落語芸術協会、五代目円楽一門会、そして立川流と、4組織に分かれている。
本稿の最期に、もう一度9日放送の『笑点』に話を戻すと、この日最期のお題は、
「円楽師匠、~してくれてありがとう」
と呼びかけ、司会の昇太師匠が「ありがとう」とかぶせるので、さらに一言、というものであった。三遊亭小遊三師匠が、
「円楽師匠、落語会の壁を取り払ってくれて、ありがとう」
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