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自衛隊に当事者能力がないので、防衛費を上げても防衛は強化できない

Japan In-depth / 2022年12月3日 23時0分

UHX(次期多用途ヘリ)として新たに採用されたUH-2の選定でも問題があった。当初UHXでは川崎重工がOH-1をベースに新規開発する案が採用された。だがこれは官製談合が発覚してキャンセルとなった。この件は現場の2佐らが独自にやったということになっているが、筆者が取材して来た限り、組織的であった可能性が極めて大きい。


そもそも失敗作で、調達・運用コストが高いOH-1をベースに開発してまともな調達ができるわけがない。まるで子供が玩具が欲しいと駄々をこねているようなものだ。


仕切り直しで選ばれたが、スバルが提案したベルの412EPをベースとする機体だった。本命は川重とエアバス・ヘリコプターが共同開発するX9だった。ところが川重が慢心して採用は規定事項だと役員が説明にこないなどもあって当のスバルやベルも驚く結果となった。防衛省、陸幕が高価なオスプレイ導入を意識して安価なスバル案を採用したという事情もある。


問題はスバル案の原型機が古く、将来性がないこと、またスバル案が採用されたことで弱小ヘリメーカー三社体制が維持されることとなった。X9が本命視されたのは、エアバスと川重が生産しているベストセラー機、BK117の後を継ぐ世界市場を狙えるヘリコプターを開発すること。これが選ばれれば自動的にスバルがヘリ事業から撤退して、メーカーの再編につながる、という内局の思惑もあった。防衛省しか顧客のない国内ヘリメーカー三社は、割高なヘリの生産を続けて防衛費を浪費した挙げ句、将来事業撤退するしかない。UH-2の採用は日本のヘリメーカーの将来を潰したことになる。


そして陸自は予備機を持っていないという問題がある。他国の軍隊や海空自衛隊は部隊に必要な配備数に加えて予備の機体を保有している。これは航空機が一定期間ごとにIRAN(Inspection and Repairing As Necessary:航空機定期修理)が必要だからだ。IRAN中は一定期間メーカーに預けられることになるので、部隊では使用できない。それを見込んで予備の機体も含めて調達計画が立てられる。


ところが陸自ではそのような予備機を調達しないので、常に部隊からIRANの機体分がない分稼働率が低くなる。このため構造的に稼働率が低い。昨今自衛隊機の稼働率の低さが話題になっているが、陸自の場合このような稼働率が低い構造が存在する。


これは実戦では致命的だ。予備の機体がないので、機体が損失、損傷しても代わりの機体が存在しない。航空機だけではなく車輌や小銃も同じだ。隊員数しか小銃がないので、壊れるとその他員は持つ小銃がない。小銃もまた一定期間に整備・修理が必要で、その際に故障箇所だけでなく、歪みなどを直して命中精度を維持し、表面処理もし直すが、陸自ではそれができない。


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