自衛隊に当事者能力がないので、防衛費を上げても防衛は強化できない
Japan In-depth / 2022年12月3日 23時0分
無人機運用では更に問題がある。日本ではドローンの飛行に関する規制を定めた航空法では、原則として目視外いわゆるカメラの映像だけを見ながらの操縦は禁止されている。また電波法の規制と自衛隊に割り当てられた電波の問題で、諸外国で無人機に使っている5GHzの周波数帯が自衛隊は使えず、2.4GHzの周波数帯がしか使えない。一部を除き海外は一般向けに売られている民生用ドローンが使用する電波は5GHz帯が大半を占め、2.4~5.8GHzまでの可変式も存在している。
このため採用されたスキャンイーグルも日本用に2.4GHzに仕様を変更されているが、そのために墜落事故が多いという。これではいくら無人機を導入してもまともな運用は不可能だ。
だが陸幕も、防衛省も総務省など関連省庁と協議したり、法改正に向けて動くことはしない。面倒臭いからだ。与えられた権限内で仕事をすればいいというのが彼らのスタンスだ。2012年の小泉内閣では有事法が制定されて、自衛隊を縛る規制の緩和に一定の成果をみた。だがその後同様な法改正を政府も、防衛省も行っていない。政策官庁のとしての自覚も網力もないならばかつての内閣の外局だった防衛庁でよかったろう。
これらの悲惨とも言えるレベルの現実を見れば防衛省、自衛隊の当事者能力が如何に欠如しており、予算の使い方がデタラメであるか理解できよう。こういう組織にいくら予算をつぎ込んでも国防力は強化できない。
予算を増やす前に防衛省や自衛隊の当事者能力を強化すべきだ。そのためには納税者に対する徹底的な情報開示が必要だ。公開情報ですら秘匿しようとする防衛省、自衛隊の隠蔽体質を生んでいる。このような歪んだ組織文化の変革こそが必要であり、それには防衛費を大幅に増額しなくても可能である。
トップ写真:日本陸上自衛隊とイギリス軍隊が合同訓練“Vigilant Isles 22”を行う (2022年11月26日)日本・群馬
出典:Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images
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