アニサキス研究第一人者 相馬中央病院原田文植医師
Japan In-depth / 2022年12月24日 11時0分
上昌広(医療ガバナンス研究所理事長)
「上昌広と福島県浜通り便り」
【まとめ】
・アニサキス症は、アニサキスに寄生された生魚や加熱不十分な魚介類を食べることで引き起こされる寄生虫感染症である。
・近年の温暖化が、アニサキスの増殖を後押し、また魚を生で食べる習慣が海外でも広まったことで、世界のアニサキス症への認識が広まった可能性がある。
・アニサキス症はがんや出血性胃潰瘍、好酸球性食道炎などとの関係を示唆する論文も発表されており、今後も研究が必要である。
福島県と関わり始めて12回目の年末を迎えようとしている。年内、最後の寄稿では、福島に関して、今年、最も印象に残った臨床研究をご紹介したい。
それは相馬中央病院の原田文植医師による寄生虫アニサキスの研究だ。
原田医師は関西出身。1998年に大阪医科大学(現大阪医科薬科大学)を卒業し、関西・東京で内科医として診療後、2020年11月に相馬市中央病院に異動した。共通の知人を介して知りあい、私が相馬中央病院をご紹介した。
アニサキス症は、アニサキスに寄生された生魚や加熱不十分な魚介類を食べることで引き起こされる寄生虫感染症だ。多くは胃アニサキス症であるが、たまに小腸や大腸に感染することもある。
胃アニサキス症の場合、食後数時間で、心窩部に激しい痛みを生じる。悪心・嘔吐や蕁麻疹用の皮疹などアレルギー症状を伴うこともある。この痛みはアニサキスが胃粘膜に侵入するときに生じると考えられている。アニサキス症を疑った場合、医師は胃内視鏡を行い、胃粘膜に侵入している虫体を見つければ、鉗子で除去する。
原田医師がアニサキス症に興味をもったのは、2021年6月、全身に蕁麻疹を生じ、夜間救急外来を受診した70代の女性患者を診察したときだ。その日、彼女はコロナワクチンを接種しており、ワクチンの副反応と思っていた。
原田医師は、定石どおり、蕁麻疹の治療薬である抗ヒスタミン剤を点滴した。ほどなく皮疹は軽快したため、帰宅させた。ただ、「胃がシクシクする」と訴えていたため、翌日の外来受診を指示した。翌朝、外来を受診した患者は、蕁麻疹は完全に消失していたが、胃の不快感は残っていた。
私なら、そのまま胃薬をだして、様子をみるところだが、原田医師は「何かおかしい」と感じて、患者に問診を続けたところ、「ワクチン当日に漁師から譲り受けたヒラメを食べた」という。緊急で胃カメラを行ったところ、「胃には10隻のアニサキスがいた」というではないか。鉗子でアニサキスを除去したところ、胃の症状は軽快した。このあたりの勘の良さは、名医と言わざるをえない。
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