「21世紀の税制」を望む(上)【2023年を占う】経済1
Japan In-depth / 2022年12月31日 11時0分
しかしその後、ジョンソン政権とは経済政策の方向性が違うとして、時の保健相とともに辞表を提出した。これがジョンソン政権崩壊の直接の原因になったことから、彼のことを「裏切り者」と呼んではばからない保守党政治家もいると聞く。事の当否はともかくとして、泥船に乗り続ける気はない、というに近い判断は、おそらくあったのだろう。もうひとつ、彼に対する根強い批判が聞かれる。「金持ちすぎる」というものだ。
2022年5月に発表された英国の長者番付によると、スナク夫妻は222位。総資産額は7億3000万ポンド(1200億円弱)に達するそうで、新国王チャールズ3世の個人資産のおよそ2倍。英国の歴代首相の中でも突出している。なにしろ配偶者であるアクシャタ・ムルティ夫人は、インド屈指の多国籍IT企業インフォシスの創業者にして初代CEOで「インドのビル・ゲイツ」と称される大富豪なのだ。二人はスタンフォード大学で出会い、読者ご賢察の通り、彼女自身もMBAを持つ著名な投資家でもある。
こうした背景から、トラス前首相がフリーマーケットで買った3ポンド50(600円弱)のブローチを愛用しているなどと「庶民派アピール」をしていたのに対し、彼はおよそ70万円というオーダーメイドのスーツにプラダの靴という出で立ちで就任会見に臨んだ。
カレー料理屋でウェイターとして働いた経験はあるが、あくまで学生アルバイトで、「労働者階級の友人はいない」と明言したこともある。庶民の苦労が分かるのか、と言われても仕方ない面はあるが、「この国では人間の価値は預金残高ではなく、人柄や仕事ぶりで判断されるはず。私は今の身上を有り難く思ってはいるが、生まれつきのものではない」というのが本人の弁である。
このようなスナク新首相が、どのように英国経済を本当に立て直せるのかは、2023年以降お手並み拝見、といったところだが、半年足らずの間に2度も首相が交代するという、英国にあっては極めて珍しい事態の中に、日本の政治を考えるに際して大いに参考にすべきものがある、と私は思う。
まず、総選挙で圧勝、懸案だったブレグジット(EUからの離脱)を実現させ、強いリーダーシップを印象づけたジョンソン首相でさえ「一強」にもならなければ、もちろん「忖度」もなく、国民感情を逆なでするような不祥事を起こせば、あっけなく辞職の沙汰になった、ということ。
さらには、このような政権の「たらい回し」は国民からまったく歓迎されず、最大野党の労働党は解散総選挙を強硬に要求し続けている。前世紀よりかの国では「景気が悪い時には労働党が強い」というジンクスがあるが、実際問題として、各種世論調査では労働党の支持率が軒並み保守党を上回っている。
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