是松豊三郎~アメリカ政府を相手に闘った男
Japan In-depth / 2023年2月17日 23時0分
コレマツはその後、弁護士からの働きかけもあって「強制収容は違憲」として裁判に訴えでた。
1944年まで、アメリカ政府を相手に最高裁まで争ったが、結果は「日系人のスパイ活動は事実であり、強制収容は違憲ではない」という判断で、コレマツの有罪は覆らなかった。
その後、終戦となったが、日系人であると言う理由で戦後も就職先で、待遇の差別があったり、「犯罪者」としての前科が付いてしまったため、望む職に就けなかったりした。
結婚し、子供ももうけたが、一連の出来事は家族にもいっさい話さなかったという。
ーーー
最高裁判決から40年近くが経った1980年から、ジミー・カーター大統領の議会署名により、戦時中の日系人の強制収容に関しての調査委員会が設けられ、再調査が行われていた。
そして1982年に、日系人強制収容に関する資料を調べていた大学教授らによって、衝撃的な資料が発掘された。
発掘された資料は、コレマツ裁判の検察側(アメリカ司法省)の弁護士、エドワード・エニスによるメモであった。
そして、そこには「我々は強制収容に関するWRA(戦時転住局)の報告が嘘である、という情報(証拠)をもっている。我々には(最高裁へ)嘘をついてはならない、という倫理的義務がある」と書かれていた。
司法省の弁護士であったエニスは、コレマツを有罪に持ち込むため「日系人が危険であることを証明する」証拠を探している最中、逆に「日系人が(スパイ活動のための)通信を行っている証拠はない」という連邦通信委員会(FCC)の報告、また、エドガー・フーバーFBI長官が自ら書いた手紙や、海軍情報局(ONI)など、権威ある複数の機関からの「日系人がスパイ活動などをしている事実はない」との調査報告書を発見してしまったのである。
しかし、司法省はなんと、その報告書を握りつぶし、裁判で証拠を捏造。結果、コレマツは有罪となってしまったのである。
1982年にメモを発掘した一人である、大学教授で弁護士のピーター・アイアンズは、その時のことを「これはダイナマイトであることに気づいた」と言っている。メモの端には「証拠隠蔽の必要性もあり」とも書かれていたのである。これ以上の捏造の証拠はなかった。
アイアンズ弁護士から証拠資料発見の報を受けたコレマツは、再び、アメリカ政府と戦う決心をした。つらい過去を思い出したコレマツにとって、再審に臨むことは大変な決心であった。
訴訟に際し、圧倒的不利な証拠を握られていることを察したアメリカ政府は、コレマツが訴訟を取り下げるなら、有罪を取り下げる「特赦」を申し出た。だが、コレマツはこれを一蹴。
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