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沖縄基地問題の新局面③ 「自衛隊配備」で漂流する政治

Japan In-depth / 2023年6月3日 0時0分

住民説明会では、町長は出席していたが挨拶もせず、彼が欠席したと思い込んだ町長を支持してきた住民が、激怒して「町長を出せ」と叫びながら退席する一幕もあった。駐屯地と地元コミュニティの関係は波乱含みとなっている。





■ 沖縄における自衛隊のイメージ





本土と比べると、沖縄における自衛隊のイメージは錯綜している。





共産党や社民党などの革新系左派は、そもそも自衛隊に対して否定的だ。逆に保守系タカ派などは自衛隊基地強化を歓迎する。保守系穏健派(自民党主流派など)や中道系(公明党など)は、離島への配備には肯定的だが、タカ派ほどではない。





一般県民について言えば、かつては旧日本軍との連想で、反発する人が多かったが、現在では、肯定的なイメージを持つ人が増えている。





その背景の一つとして、離島などからの陸自ヘリによる患者の救急搬送が挙げられる。自衛隊が沖縄に駐屯して以来、50年以上にわたって、1万人を超える急患を搬送してきており、今や離島には欠かせない存在だ。現時点で、沖縄出身の自衛隊員が3,000人を超えることも、県民の自衛隊に対する好感度の高さを反映している。





しかも、尖閣や台湾に対する中国の強硬な姿勢に不気味さを感じ、若い世代を中心に自衛隊への支持は広がっている。とは言え、ミサイル部隊の配備は中国を刺激し過ぎと考え、自衛隊基地の強化を支持すべきかどうか、ためらう人も少なくない。





■ 八重山諸島の空襲と戦争マラリア





沖縄戦は、日本領土内での唯一の陸上戦であった。悲惨な戦争の舞台となった本島南部は、広島、長崎と並ぶ平和学習の中心地になっている。





一方で、八重山の沖縄戦、特に空襲の被害は見過ごされがちだ。





空襲による直接の死亡者は、石垣島で113名、与那国島で38名、八重山諸島全体では178名に上り、マラリアによる死亡者は3,600名を超える。マラリアによる死は軍による疎開命令の結果だった。軍が配置されたために空襲があり、住民はマラリア蚊が生息する地域へ強制移動させられた。その戦争体験は、「軍は住民を守らない」という言い伝えを生んだ。





自衛隊基地が強化されれば、与那国は要塞の島となる。「有事」には確実に戦域になり、中国からミサイル攻撃されることが容易に想定される。しかも、小さな島の中に逃げ場はない。





台湾情勢が悪化し、戦争が確実視される場合、「武力攻撃事態等」で国民保護法が適用され、住民避難が実施されることになっている。しかし、この国民保護法は2004年に制定されたもので、もはや現状に合わない。





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