沖縄基地問題の新局面③ 「自衛隊配備」で漂流する政治
Japan In-depth / 2023年6月3日 0時0分
岸田政権は防衛力強化には注力したが、それとセットで実施すべき国民保護体制の整備では、大きく出遅れた。つまり、「有事」とはいかなる事態なのか、全体像を把握しないまま「防衛力の抜本的強化」に走った、と言われても仕方がない。
■ 一般県民の「台湾有事」への関心は意外と薄い
メディアは派手なニュースを好む。5月連休の直前に、北朝鮮の軍事偵察衛星発射計画に対処するために、防衛省がミサイル防衛システム・パトリオット(PAC3)の先島諸島への緊急配備を発表すると、同諸島での報道合戦が始まった。
記者やカメラマンたちが先島諸島に急遽駆け付けるが、「コロナ明け」による観光客の急増と重なり、宿泊施設とレンタカーの奪い合いになった。混乱を横目で見ながら「たかが人工衛星だろう」と皮肉る地元の人も多い。
この奇妙なコントラストは、沖縄全体で起きていることでもある。ほとんどの沖縄県民にとっての最大の関心事は、コロナで受けた生活への打撃と物価高騰だ。離島への自衛隊配備に関する論争や「対話」の試みなどは、庶民とは無縁のエリート談義と受け取る人が多い。
■ 政治勢力の弱体化と安全保障をめぐる政策論争の空転
辺野古埋め立てに反対する保革相乗りの「オール沖縄」陣営は、県民の反政府感情に乗って次々と大型選挙で勝利し、一時は沖縄政治の主流となった。
しかし、この陣営は、激しい反基地感情に依存していたために、問題が長期化し、辺野古埋め立てが進むにつれて、勢いを失うのは自然の流れだった。保守系や経済人が脱落し、今や、「オール沖縄」ではなく「オール革新」だと揶揄される。
また、コロナ禍の影響で生活苦にあえぐ人々は、基地反対ばかりを叫ぶ革新系から離れ、経済重視の保守系を支持するようになって、同陣営の退潮に追い打ちをかけた。そこで、彼らは起死回生を狙って、米軍基地から自衛隊配備の問題へと運動の重心を移そうとしている。
革新系は、米国が中台対立を煽っていると主張する。確かに、イラク戦争などのように、米国は無責任で破壊的な行動を取ることがあるが、現在、東アジア情勢を不安定にしている最大の原因は、中国の急速な軍拡と台湾への強硬な統一圧力である。それを指摘しないところに、反米路線から脱却できない、この勢力の限界がある。
他方の保守系も問題を抱える。主流派は経済に関心が集中しがちだ。しかも、議員は個人商店化し、安全保障については、情報の収集と共有を怠り、積極的に取り組まない。
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