G7が示した日本の「理想」の空疎
Japan In-depth / 2023年6月6日 19時0分
そしてスウィーニー氏も「日本本土上陸作戦で予測された戦死者数を考えれば、原爆投下は適切だった」と述べたのだった。同氏は、当時の日本軍の徹底抗戦ぶりや国家首脳部の「一億総玉砕」の宣言をあげて、原爆がいかに多くの人命を救ったかという主張を語った。その語調はきわめて冷静だった。
その後に発言を求められた私は日本人としての当然の反論を必死で語った。
「日本の降伏は当時すでに確実視されていた。とくに2発目の長崎への投下は不必要だった。日本側に原爆の威力を示すのならば無人島や過疎地にでも投下できた」
そんな主旨を民間人の無差別殺傷という非人道的な特徴と合わせて説いたが、米側3人の怒涛のような議論に対しどれほどの説得力があったかはわからなかった。
いまここで30年前の古い討論を持ちだすのは、アメリカ側の認識が現在も基本は変わっていないからである。日本の理想も外部世界のこうした現実を無視はできないだろう。現に日本が岸田文雄首相を先頭に訴える核兵器全廃の理想的な主張は現実になんの実効も生んでいないからだ。
北朝鮮の核兵器開発への一貫した動きはまさに核全廃の主張への侮辱的な逆行である。中国の核弾頭の大増加も日本の訴えの完全な無視である。しかし日本の反核運動はこうした日本に対して敵性を持つ国家の核兵器への抗議をあえてぶつけず、逆に日本が依存しているアメリカの核兵器への反対だけを叫ぶ、という政治色をぎらつかせる過去の実績があったことも、この際、強調しておこう。
*この記事は日本戦略研究フォーラムのサイトに古森義久氏が寄稿した論文の転載です。
▲トップ写真:広島県・宮島の厳島神社を訪れたG7広島サミット各国首脳(2023年5月19日 広島・廿日市市)
出典:Photo by Stefan Rousseau - Pool/Getty Images
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
なぜ広島・長崎に「人類史上最悪の兵器」が落とされたのか…「降伏しない日本が悪い」というアメリカの詭弁
プレジデントオンライン / 2024年6月21日 9時15分
-
「世界情勢不安な今こそ」 高校生平和大使、広島で結団式
共同通信 / 2024年6月16日 17時4分
-
非核願い座り込み500回 長崎の被爆者ら、45年継続
共同通信 / 2024年6月9日 18時42分
-
映画「オッペンハイマー」 原爆開発した博士の孫、広島被爆者と面会 博士が広島長崎を訪れなかった理由とは
まいどなニュース / 2024年6月7日 15時19分
-
NATO諸国、ウクライナ支援の方針転換でプーチンの警告を無視
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月3日 17時40分
ランキング
-
1厳重警戒!今年の梅雨一番の大雨…災害の危険高い状態が今夜遅くにかけて続く【山口天気 朝刊7/1】
KRY山口放送 / 2024年7月1日 6時53分
-
2自民・二階俊博元幹事長「取り違えたんではないだろうが、総裁選挙の幕開けというか、スタートが早すぎたね」動き活発な自民総裁選の行方に見解示す
MBSニュース / 2024年6月30日 23時15分
-
3茂木敏充氏が自民総裁選に意欲も…《河野もあり得ないが、茂木もあり合えない。そろって勘違い》と悪評ふんぷん
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月1日 9時26分
-
4同居を断られ83歳母の右腹部を包丁で突き刺した疑い、56歳の自称会社員逮捕…三重・四日市
読売新聞 / 2024年6月30日 22時46分
-
5【避難指示】福岡県宗像市・古賀市・福津市・うきは市・東峰村 土砂災害の恐れ 道路が川のようになり車が水没
FBS福岡放送ニュース / 2024年7月1日 9時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)