中国料理の海外普及と文化遺産化
Japan In-depth / 2023年6月14日 7時0分
この12文字の意味はすなわち、「全聚徳」の料理は豊富で品質に優れており、欠点がなく、天下の賓客はここで会食して情を集め、「全聚徳」のお店の人が仁徳の心をもってお客様に誠実に奉仕する理想的な信念を集中的に体現している、ということである。
写真)北京ダック(イメージ) 出典)Lisovskaya/GettyImages
続いて中国料理の海外展開について岩間氏は以下のように述べた。
「水を沢山使う日本の料理と異なり、火を主に使う中国の料理は比較的世界各地で流行しやすい。今や日本食の方が世界で流行しているが、中国料理は昔から世界に伝播していた。火さえあればどんなものでも調理できるのだ」。
中国料理の調理法は主に2つに分けることができ、1つが蒸し調理で、2つ目が炒め調理である。両方とも非常に便利な調理法で、「蒸す」に関しては昔から存在しており、少なくとも2000年の歴史があるという。
一方で、「炒める」のは1000年足らずで「蒸す」に比べて新しい。
他の国民料理には見られない中国料理の特徴として、地方料理が異なる国に伝播し国民食にまでなることだ。中国の各地方の料理が民間を中心に自然と広がり、移民や移民を受け入れたホストカントリーが重要な役割を果たしている。米や野菜、豚肉などの材料と調理法がマッチしたこともあり、東アジア、東南アジアを中心に中国料理が広がる。
例えば、タイのカオマンガイやインドネシアのナシ・アヤムなどは全て元々中国料理である。また、ベトナム料理であるフォーのように中国料理と現地の料理が混じって国民料理となった例もある。ベトナムのフォーはフランス植民地時代、広東料理の湯麺にフランス料理で使われる牛肉片が入って出来た。
写真)フォー(イメージ) 出典)YinYang/GettyImages
中国料理が海外各地に広まるにつれて、現地の料理との区別が難しくなることがある。料理にまつわる偽伝承も数えきれない。しかし、これに対して岩間氏は以下のように見解を述べた。
「食べ物に偽伝承があるのは良いことだ。ストーリーがあった方が料理が盛り上がる。その料理がどんな料理かは作る調理師や食べる顧客によって変化する。何料理かは究極には彼らのアイデンティティーによる」。
最後に、タニシビーフンのような無形文化遺産への登録に加えて、近年ではテレビやインターネットの中国料理のドキュメンタリー番組によって、現代中国の美食文化が中国のソフトパワーとしての存在感を増している。米中デカップリングが深刻化するなか、韓食ブームや日本食の流行に続いて、中国料理が、中国とアメリカ、さらには全世界との交流を促進することを期待したい。
写真)『中国料理の世界史 美食のナショナリズムをこえて』岩間一弘著
© 岩間一弘
トップ写真:干炒螺蛳粉 (タニシビーフン)© Japan In-depth 編集部
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