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陸自の広帯域多目的無線機は使えない(上)

Japan In-depth / 2023年6月14日 18時0分

陸自の広帯域多目的無線機は使えない(上)




清谷信一(防衛ジャーナリスト)





【まとめ】





・広帯域多目的無線機(コータム)は、データや動画送れず軍用として致命的。





・総務省が防衛省に割り当てている電波の周波数帯は軍用無線に適していない。





・陸自の無線機は通じない、充足率が低い。東日本大震災への対応でも露呈。





 





陸上自衛隊では部隊での通信端末として広帯域多目的無線機(略称:広多無(コータム))が採用されている。NECが開発していたソフトウェア無線技術が採用されており、波数帯域としてはHF・VHF・UHFに対応し、また音声通信とデータ通信の同時利用が可能となっている。所要のソフトウェアを使用することで、3自衛隊間およびその他の部外関係機関との直接通信が可能となっている。





だがコータムは性能と使い勝手に大変問題がある。それを防衛省も陸上自衛隊幕僚監部も認めようとしない。





総務省が防衛省に割り当てている電波の周波数帯は軍用無線に適しておらず、コータムは現代の無線機としてはアナログ、デジタルともに変調方式が大変遅く、伝送速度はVHFで約1kbpsでしかない。音声やメール、静止画像をおくるのが精一杯である。他国のようにデータや動画を送ることはできない。





対して、HFデジタル通信の世界標準は128kpbsである。現在、米軍が使用しているUHF/VHF無線機は5G通信であり、10Gbpsである。これはネットワーク化が進む現代の軍隊では致命的な欠陥である。





2020年1月の河野太郎防衛大臣(当時)の記者会見で筆者がコータムの性能にかかる問題についての質問をしたところ、その回答として河野大臣は陸自に同年7月13日、プレス向けのパフォーマンスを行わせた。だが、これは「ぜったい通じる」ように設定で実施したプロパガンダのための「見世物」だった。





会計検査院はコータムの性能不良改善のための改修を防衛省に勧告したが、2018年度の段階で1万9,357台中、ほぼ6割が未改修で放置されている。河野大臣の「パフォーマンス」の時点でも大した差はなかったろう。こんな茶番をやるくらいならば、欧米の主要無線機と実際に演習で性能を比較し、それを大臣に報告させればよかった。また大臣ならばそのような命令を出すべきだった。このパフォーマンスによって河野太郎大臣はコータムの性能にお墨付きを与えてしまったことは大変問題だ。河野大臣が正しく問題を認識して、調査と改善を命じていたらコータムの問題が解決していたかもしれない。大変残念である。





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