陸自の広帯域多目的無線機は使えない(下)
Japan In-depth / 2023年6月15日 18時0分
「広帯域多目的無線機」でありながら、広帯域を活用できていない。これは使用している周波数帯が旧式無線機とほぼ変わらないからだ。コータムはHF帯やUHF帯を活用できる能力があるが、普通科の中隊クラスだと有効に活用できる機材がない状態のため、宝の持ち腐れの状態である。
このため車載型無線機は最近使用され始めたが、携帯型無線機に至っては、ほとんど使用されていない状況だ。前線の隊員は、広帯域多目的無線機の脆弱性と使いにくさ(移動時に背嚢に入れると高温になり不調を起こしやすい、ケーブルがむき出しのため錯雑地で引っかかりやすい)によって、旧式と比べて利点が無く、旧式の方がマシだと指摘する。部隊では繋がらない理由は、秘匿性を保つために出力を絞っているからだ説明されるが、繋がらない理由の正当化にはならない。またホームセンターなどで売られている、特定省電力無線機と比較してコータムの方が繋がらなかった、実験開発レベルでは屋内でもよく繋がらなくなったという指摘もある。
また軍用無線機としては水準以下である。部隊で広帯域を使用しようとしても、必要な構成品の配当が無い。HF帯、VHF帯を使用する場合、専用のアンテナが必要であるが、VHF帯のアンテナのみ部隊に支給されているだけである。戦闘が生起しうる第一線部隊の激しい行動に対して、ケーブル等が剥き出しため、破損しやすい構造になっている。(ケーブル、アンテナ、特に携帯無線機、コネクタの破損)。
NECの説明では、コータムは堅牢であり、厳しい気象環境でも対応するとされているが、悪天候や、夏の炎天下において不調(降雨時の接触不良、高温下での送信不良)を起こしやすい。これは夏場に高温多湿となる我が国の環境においては致命的である。
訓練の前に隊員がケーブルをビニールテープによる補強、防水処置をする現場の努力によって演習を実施している状況である(特に携帯無線機)。旧無線機と比べて、修理性が非常に悪い。各部品が破損しやすい構造であるにもかかわらず、メーカーとの契約によって、野整備部隊による整備権限が限定されているため、部品の分解修理が可能な部品においてもできないものがある。
このため前線において通信機の修理ができず、メーカーへ後送することになるが、現在、修理完了も数年待ちの状況である。現時点では、対衝撃性、厳しい気象状況下での運用(対候性)が求めるレベル(実戦、通常の訓練)にはない。
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