1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

陸自の広帯域多目的無線機は使えない(下)

Japan In-depth / 2023年6月15日 18時0分

▲広帯域多目的無線機の無線技術概念図。


出典:日本電気(NEC)新野外通信システムの試作、装備化 より


通信機の保有数が少ないことも問題だ。陸自装備は小銃から航空機に至るまで部隊定数以外の予備を調達しない。このため部隊で使用している機材が故障、あるは定期修理に出すと部隊でたちまち数が足りなくなり、稼働率は激減する。陸自装備の稼働率の低さはこれが一因である。ただでさえコータムは故障が多いのに、破損による修理の大幅な遅延によって、部隊が保有する通信機では不足しているため、自隊の保有通信機に加えて、他部隊の通信機を借用しなければならない状況で訓練検閲などを実施している状況である。


つまり一般隊員が持つ無線機は武人の蛮用に得る堅牢性、簡易性に欠ける。指揮官クラスの使用する無線機(主に車載無線機)は専門の知識を持つ隊員(MOS保持者)が操作、支援して使用せざるをえない。隊員の多くが使用する携帯無線機は、操作や設定が複雑で専門知識に乏しい隊員にとって使い勝手が悪い。使用中に再起動が必要になることが多く、電源が切れると設定が元に戻ってしまう。設定する要素が細かすぎて間違った設定をしてしまう、などの問題が多発している。これは軍用無線機として失格だ。


更に申せばコストも高すぎる。1ユニットあたりの調達単価が高く、このため部品の修理もできず、逐次仕様の違う新規品を購入することになるため、旧式と比べてランニングコストが非常に高くなる。使用電力が旧式に比べて大きく、携帯無線機用の電池の消耗が大きい。


電池が専用であるのも問題だ。他国では規格化された電池を使用することが多い。そうであれば他の電池との値段の競合が発生するが、極めて高価な専用電池が使用されている。このため電池はNECから純正品を買うしかない。無論コスト低減のインセンティブは働かない。また有事の際に輸入で賄うこともできない。


事実、昨年は電池のコスト高騰からか、電池の補給が年度半ばからストップし、無線機の使用に大きな影響がでており、現在も節用などの現場の努力により何とかしている状況だという。更に申せばコータムの耐用年数は12年に設定されており、通常の機器の10年より長い。デジタル機器が10年以上野戦の運用でそこまで安定的に運用できるとは通常考えられない。


無線機自体は軽量化されているが、消費電力が大きく大量の電池を携行する必要があり、隊員の負担はかえって増加している。電池の使用が変化したため詳細な比較はできないが、携行する電池の個数が増えて携行重量が増加、2倍近くになっている。


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください