誰も幸せにならないLGBT法案 住みにくくなる日本 その2
Japan In-depth / 2023年6月20日 11時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・LGBTは生産性がないとの「差別的発想の水脈」は、軍国主義を補完する「富国強兵」の国是をよきものとすることに行き着く。
・法案では「同性カップルなど見るのも嫌」という差別発言を「それは貴方の感想ですから」と不問に付す余地が残された。
・異論噴出の法案を時間をかけて審議することなく成立させる日本の政治こそ抜本的改革が急がれる。
13日、LGBT法案が衆議院を通過した。正式には「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律」だが、煩雑を避けるため、本項ではLGBT法案で統一させていただく。
今さらながらだが、Lはレズビアン、Gはゲイ、Bはバイセクシャル、Tはトランスジェンダーの頭文字で、性的マイノリティと呼ばれることも多いが、当事者からは、十把ひとからげみたいな扱いは不愉快だとの声も聞かれるようだ。最近ではまた、自分の性別を認識できない「クエスチョン」という存在にスポットが当てられ、さらには「それ以外の性的マイノリティ」を加えて、LGBTQ+と表記する人も増えつつある。
問題は、この法案が可決に至った過程だが、与党内、具体的には自民党保守派と称される人たちの間では法案自体に反対する意見が聞かれて、採決に際しても、自民党の高鳥修一議員は、おなかが痛いと言って、議場を抜け出してトイレに駆け込み、採決に加わらなかったし(小学生か!)、杉田水脈議員に至っては本会議を欠席した。
彼女については以前にも取り上げたが、LGBTの人たちについて「子供を作らないから生産性がない」などと発言し、その後2022年に、総務大臣政務官に抜擢された後で、以前の発言が「多くの人を傷つけた」として陳謝した。しかし、ちゃんとケジメをつけるつもりはないらしい。
法案の骨子は、LGBTであることなどを理由に解雇されたり、社会的に不利な扱いを受けることに対して法的歯止めをかけることと、そうした人たちの人権を尊重するよう、教育現場などに努力を求めるというもので、これ自体に異論を唱える人は、あまりいないだろう。まあ、だからこそ国会でも賛成多数で通過したわけだが。
自民党保守派や、参政党などが法案に反対した主な理由はふたつある。
紙数の関係上、詳細な引用はできかねるが、かいつまんで紹介させていただくと、ひとつはLGBTを社会的に認知すべきというのは、わが国の伝統的な価値観にそぐわない、といったことで、いまひとつは、肉体的に男性でも「自分は女性」と考えているような人が、女子トイレや公衆浴場の女湯に入れるようになると、性犯罪などの問題が起きやすくなる、ということだ。
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