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フランス暴動の背景に「郊外」問題

Japan In-depth / 2023年7月6日 18時0分

だが、この時代は労働者の住む環境などまったく考えもしない時代だ。それゆえ工場の周りにバラック小屋などができ、劣悪な環境の住宅や移住地域が形成されていくことになった。また、フランスで生活し働いていく中、移民としてフランスにやってきた労働者たちも正当な労働者としての権利に目覚めはじめ、ストライキなどの労働争議が発生するようになっていったのだ。


ただでさえ、バラック小屋でできた街の不潔さが問題になっているのにもかかわらず、さらに問題が増えていく結果となった。


そんな時代に起こったのがオイルショックだ。オイルショックによりフランスが経済不況に陥ったのを期に、国境が封鎖され、就労を目的とする移民の受け入れを停止することとなった。こうしてフランスは、移民に帰国をうながし、移民流入を抑制し、正規滞在移民に対してはフランス社会への統合を柱とした移民政策をすすめていったのだ。


環境も整備されることになった。工場周りにできたバラック小屋の撤去がはじまり、低所得者用の住宅を建設するなどの改善が進められていった。しかし、建設場所はもちろん工場に働きにいくのに便利なように、工場周辺だ。しかし、これこそがバンリューと忌み嫌われる地域が形成される原因になる。


同じ町に低所得者用の住宅が次々と建てられていったのだ。もちろん、この住居に住んだのは移民を由来とする人々だけではない。街の中心部に住んでいた低所得者も入居していったが、この結果、フランスの都市部と郊外は完全に分断された。低所得者(主に移民出身者)が住む街と、裕福層が固まって住む街にきっぱりとわかれることになったのである。


社会の分断は、子供達の教育にも大きく影響をおよぼした。フランスの教育システムにも問題があったからでもある。もともとフランスの教育というのは裕福層が対象にされていた。それは、学校での授業時間が短く、宿題が多いシステムだった。


このような状況では、家での教育がとても重要になってくる。お金があって家庭教師を雇える環境であったり、親が教えられるぐらいのレベルにあったりすることが前提となる教育システムだからである。学校での教育時間が少ないというのは、親の教育レベルや収入レベルが子供に影響をおよぼしやすくなるのだ。


こういった教育環境では、フランス語も話せず、自国で十分な教育を受けていない親が多くいる移民出身者の子供には明らかに不利な状況だったとも言える。学校に行っても勉強についていけない子供が多く現れた。しかも、勉強についていけなければ、強制ではないが転校を進められ、転々といくつか学校を回ったあと、学校を退学になる。問題を起こしても同じことだ。


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