地域住民の命を守った鹿島厚生病院渡邉善二郎院長
Japan In-depth / 2023年7月30日 18時0分
このような状況なら、福島県の役人が、「病院は何かするときには、県庁にお伺いを立てるのが当然」と信じ込んでいてもおかしくない。私には、大災害時でも、現地での判断ではなく、県幹部の思惑が優先されているように見えた。
ただ、部外者の私からみて、浜通りの医師が思うほど、福島県や福島県立医大は頼りにならない。東日本大震災で、医局員を引き上げたところはあっても、大量に医師を派遣し、被災地を支援したそぶりはない。
読売新聞の報道が効き、鹿島厚生病院の入院診療は5月2日から再開された。再開以降、私は何度か病院にお邪魔させて頂いた。
5月5日(子どもの日)に訪問した時、渡邊院長は当直中で、丁度、救急車が到着したところだった。患者は下痢が続いている高齢者だった。脱水が酷く、全身状態が衰弱しているため、入院となった。ウイルス感染による急性胃腸炎だろう。この患者で、入院患者数は14人目という。毎日4, 5人の患者が入院していることになる。
渡邊院長が診察している間、救急隊と話すことができた。「鹿島厚生病院が入院を再開して、多くの患者が救われています」と言ったのが印象に残った。
もし、鹿島厚生病院で入院できなければ、この患者は遠く福島市か、仙台市に運ばれていた。脱水状態の高齢者にとっては、相当な負担だ。途中で急変してもおかしくない。鹿島厚生病院の入院診療再開は、地元住民は勿論、救急隊員にとっても朗報だったようだ。
その後も入院患者は増え続けた。5月24日には、渡邊院長から「42名の方が入院しています(中略)。仮設病棟、仮設老健の件も厚生連、南相馬市、福島県に働き掛け進めていきたいと考えています」と連絡が入った。特に看護師の負担は多く、過労で倒れる寸前だという。
これが東日本大震災直後の福島の現状だ。この状況でスタッフをまとめあげ、診療を継続し、地域住民の命を守ったのが、渡邉院長だった。時の経過とともに、当時の記憶は薄らいできた。東日本大震災当時の福島で何が起こったのか、私は、この貴重な経験を後世に伝えていきたいと思う。
トップ写真:渡部善二郎院長と筆者 2011年4月21日。鹿島厚生病院にて(執筆者提供)
この記事に関連するニュース
-
医療情報誌 月刊『集中』2024年7月号 巻頭インタビュー 福井次矢 卒後臨床研修評価機構 理事長/集中OPINION 安藤立美 東京都立病院機構 理事長 他
PR TIMES / 2024年6月30日 16時15分
-
【病院経営者・幹部対象】7月24日(水)第80回勉強会 「データで考えるケアミックス」講師:葦沢龍人先生(東京都健康長寿医療センター 保険指導専門部長)主催:日本の医療の未来を考える会
PR TIMES / 2024年6月28日 18時15分
-
機能を失った災害拠点病院 8億5000万円かけて水害対策 多額の費用負担など課題も
RKB毎日放送 / 2024年6月27日 18時24分
-
厚労省、美容医療で検討会設置へ 被害やトラブル増、適正診療促す
共同通信 / 2024年6月14日 12時52分
-
「良い手術を受けるために患者さんがすべきこと」と「日本の医療制度の問題点」/渡邊剛(ニューハート・ワタナベ国際病院総長)
マイナビニュース / 2024年6月12日 7時30分
ランキング
-
1同居を断られ83歳母の右腹部を包丁で突き刺した疑い、56歳の自称会社員逮捕…三重・四日市
読売新聞 / 2024年6月30日 22時46分
-
2裏金事件、自民御法川氏が土下座 国対委員長代理、秋田会合で謝罪
共同通信 / 2024年6月30日 19時52分
-
3自民・二階俊博元幹事長「取り違えたんではないだろうが、総裁選挙の幕開けというか、スタートが早すぎたね」動き活発な自民総裁選の行方に見解示す
MBSニュース / 2024年6月30日 23時15分
-
4厳重警戒!今年の梅雨一番の大雨…災害の危険高い状態が今夜遅くにかけて続く【山口天気 朝刊7/1】
KRY山口放送 / 2024年7月1日 6時53分
-
5安倍氏三回忌で法要=岸田首相「志引き継ぐ」
時事通信 / 2024年6月30日 18時58分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください