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なぜ大阪・近畿の私立高校は、吉村府政の「高校授業料完全無償化」に反対なのか

Japan In-depth / 2023年8月7日 7時0分

なぜ大阪・近畿の私立高校は、吉村府政の「高校授業料完全無償化」に反対なのか


重康 学(開明中学校高等学校 教頭)





【まとめ】


・吉村知事公約の「高校授業料完全無償化」が「新制度案」として提示された。


・「大阪私立中学高等学校連合会」、新制度案に反対。


・問題は、各学校の負担額が大きく膨らむこと。


 


今年4月に行われた大阪府知事選で吉村知事は、「高校授業料完全無償化」を公約に掲げていました。そして5月9日,大阪府から後述する「新制度案」が提示されました。


これに対して5月29日、「大阪私立中学高等学校連合会」は総会で「府内の私立高校全てが完全無償化の理念には賛成するが、提示されている新制度案には賛同しない」と議決し、反対の意思を明らかにしました。


その後も6月19日に近畿2府4県の私学団体でつくる「近畿私立中学高等学校連合会」が,6月23日には私立学校に子供を通わせる保護者らでつくる「大阪私立中学校高等学校保護者会連合会」が相次いで府の制度案について見直しを求めています。


なぜこのような状況になっているのか,私の勤務する開明中学校高等学校(以下、「本校」)の場合も例にしながら述べていきます。


本校は大阪市内にある共学の私立中高併設校で現在、生徒約 1600 人、教職員約 150 人が在籍し、来年度創立 110 周年を迎えます。


 


(1) 私立学校の収入源


私立学校の一般的な収入源は主に,生徒・保護者からの授業料や入学金などによる「学生生徒等納付金収入」と、国や都道府県からの「補助金収入」の二つがあります。本校の場合、「納付金収入」は年間約10億円、「補助金収入」が約5億円ですので両者の3分の1を公費(税金)が占めていることになります。


「補助金収入」には、人件費などの学校運営経費を補助する「経常費助成」と、保護者の負担軽減を目的とする「就学支援金」の二つがあります。これらは国からの交付金を元に都道府県が各学校に支給しています。また都道府県独自の「支援補助金」という制度もあります。


 


(2) 大幅にカットされた大阪府の「経常費助成」


大阪では2008年、橋下府政のとき財政健全化を理由に「経常費助成」が25%カットされました。これによって児童・生徒1人あたりの助成金額が小中学校で全国最低に、高校はワースト2位の水準に陥りました。その後、私学側の要請もあり高校については復活したもののワースト2位は変わっていません。現在の大阪府の高校生一人当たりの助成額は約 32 万円で、トップの鳥取県より約 13 万円、2位の東京都より約 8 万円それぞれ少ない状況です。


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