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なぜ大阪・近畿の私立高校は、吉村府政の「高校授業料完全無償化」に反対なのか

Japan In-depth / 2023年8月7日 7時0分

 


(4) 「高校授業料完全無償化」の新制度案


5月9日に提示された大阪府の新制度案は、以下の1~3のような内容でした。


1. 授業料無償化の所得制限を撤廃する。ただし大阪府が定める標準授業料 60 万円を超える部分は各学校が負担する。


2.標準授業料との差額が大きい学校は、授業料無償化の推進校から外れるかもしれない。その場合、生徒は大阪府の授業料支援金を全く受け取れない。


3.2024年度の高校3年生から所得制限を撤廃し、2026年度に全学年で授業料を完全無償化する。


この制度案のまま執行されると、(3)の(A)~(D)すべての世帯で、


「保護者負担 0 円 +公費負担 60 万円+本校負担 5 万円=授業料 65 万円」となります。


これによって大阪府在住生徒・保護者の負担はすべてゼロとなり、これについては私学側も賛成しています。


ところが問題は、各学校の負担額が大きく膨らんでしまう点にあります。本校の場合、現在5万円を支給している生徒は全体の約 30 %ですが、これを大阪府在住のすべての生徒に支給する必要があり、試算では 2026年度には現在より約3,000万円の負担増で年間の負担総額は約 4,000万円になる見込みです。


これだけの金額を学校の教育活動にかかる費用を節減することでカバーすることは容易ではなく、「手を付けるのは人件費から」ということになりかねません。本校の試算による負担額はフルタイムで勤務する本務教員6~8人の人件費に相当します。これだけの減額が毎年続けば、生徒の教育環境、教職員の労働環境に大きな影響が出ることは想像に難くありません。


またこの制度では、授業料が65万円であっても70万円であっても、学校への収入は60万円になります。つまり「標準授業料」以上の高校の授業料が、実質一律に60万円になることを意味しています。


「大阪私立中学高等学校連合会」によると、新制度による大阪府の私学全体の負担総額は約20億円となり、年間で 2 億円ほど支出が増える学校もあるようです。同連合会は、「キャップ制によって知事が授業料を一定に設定することは法に抵触しかねない行為で、大阪府によって授業料が値切られていくような形になる。各学校が教育の内容・質を下げて運営せざるを得ない状況に陥り、何より子どもたちが困ることになる。これは私学の教育の自由を奪うもので決して許されるものではない」と訴えを強めています。


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