トランプ前大統領の4回目起訴の虚実
Japan In-depth / 2023年8月25日 23時0分
この驚きの反対論はワシントン・ポストの著名なコラムニストのルース・マーカス記者による8月15日付の同紙に載ったコラム記事だった。「ジョージアでのトランプ糾弾は過剰ではないのか」という見出しの記事である。
マーカス記者といえば、きわめて広く知られたリベラル派の女性コラムニストである。1980年代からワシントン・ポストの記者としてホワイトハウスや最高裁判所の取材を担当し、評価の高い記事を多数、書いてきた。2006年からはワシントン・ポストのコラムニストに昇進し、独自のコラム記事を毎週、自由闊達に載せてきた。だがその基本の政治スタンスは一貫して民主党傾斜のリベラルだった。だからトランプ氏に対しては常に批判的だった。
ワシントン・ポスト自体も長年、国内政治では明確に民主党支持、リベラル支援、保守批判だった。だからマーカス記者はリベラルの旗を高く掲げるコラムニストだったのだ。そのマーカス記者も、ワシントン・ポストも、共和党保守のトランプ前大統領に対しては、ほぼすべて反対という厳しい批判の立場を保ってきた。
だが、今回に限ってはそんなリベラル派、反トランプ勢力の旗手ともいえるマーカス記者が第4回目のトランプ氏起訴に対しては反対論を表明したのである。
ではまずその4回目の起訴の内容について説明しておこう。
アメリカ南部ジョージア州フルトン郡のファニ・ウィルス地方検事は8月14日、同郡の大陪審の評決結果としてトランプ前大統領とかつてのその側近18人の合計19人を2020年の大統領選で大接戦となったジョージア州の投票集計を州当局者への虚偽の通告や不当な圧力で自陣営に有利に変えようとした、とする罪状で刑事起訴した。
起訴された人物のなかには年来のトランプ氏の顧問弁護士でニューヨークの高名な検察官から市長までも務めたルドルフ・ジュリアーニ氏やトランプ大統領の首席補佐官だったマーク・メドウズ氏までが含まれていた。この合計19人をフルトン郡の大陪審や裁判所で半年ほどの間に一気に裁くというのだ。
起訴状はその19人に対する罪を本来、マフィア摘発のために作られた「威力脅迫・腐敗組織法(RICO)」というジョージア州法の違反だとしていた。
この起訴は多数の点で司法の執行としてみても異例だった。まず第一には大統領選挙での集計をめぐる違法の追及という国政の最高レベルでの課題を連邦レベルでもなく、州レベルでもなく、その州のなかの一行政区に過ぎない「郡」の検事が断行した点である。
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