トランプ前大統領の4回目起訴の虚実
Japan In-depth / 2023年8月25日 23時0分
第二には、その起訴の対象が単にトランプ氏に留まらず、トランプ氏の側近とされた合計18人もの人物を一網打尽という感じで一括して裁くという構図が異例だった。
第三はこの国家レベルの容疑にフロリダ州の州法、しかも本来は犯罪組織のマフィアの取り締まりに適用したRICOという特定の州法を使っている点も異例だった。つまり検察側はトランプ氏とその側近をマフィアに等しい犯罪集団とみるという前提から追及を始めたわけなのだ。
そして第四にはこの起訴処分を進めた黒人女性のファニ・ウィルス検事は年来の民主党員の政治活動家である点にも、特殊性があらわれていた。同検事は2年ほど前に民主党支持と反トランプの政治スタンスを明確にして、地方検事の選挙に立候補して、当選したのだ。しかも来年には再選を目指すという。
写真:フルトン郡庁舎で記者会見に臨むフルトン郡地方検事ファニ・ウィリス氏(中央) 2023年8月14日 ジョージア州アトランタ
出典:Photo by Joe Raedle/Getty Images
第五にはトランプ氏に対する民主党バイデン政権下の司法機関からの追及があまりに急迫かつ頻繁な点である。ニューヨーク州マンハッタン地区の地方検事がトランプ氏を10数年前にかかわりがあったとされる女性への「口止め料」を払った嫌疑で起訴したのは今年3月末だった。以来、機密文書持ち出しの容疑、議会乱入を煽り、選挙結果を不正に覆そうとした容疑で2回目と3回目の起訴を受けた。しかも前回の3回目の起訴は8月1日という至近だった。どうしてもトランプ氏の政治生命を奪おうとする政治的な意図がにじむのである。
トランプ氏はすべての起訴を民主党側の政治弾圧の「魔女狩り」としてはねつける。共和党側の連邦議員や大統領選の候補たちもその主張に同調する。共和党支持層は各種の世論調査でも7割から8割がトランプ氏起訴を不当だとみなす。無党派層でも一連の起訴には政治的意図があるとみなす反応が多数派を示す。その結果として、トランプ氏への一般の世論調査での支持率が起訴の措置が断行されるたびに上昇するという皮肉な現象が起きている。トランプ陣営への政治献金の額も急上昇なのだ。
しかし民主党支持層は一般にトランプ氏起訴は歓迎という向きが多数派である。だが意外にも民主党支持色の濃いワシントン・ポストのマーカス記者が評論記事が起訴反対論を表明したのだ。マーカス記者はこの記事で8月1日のワシントンでの連邦検事によるトランプ氏起訴がジョージア州での集計変更をもすでに罪状としたと指摘し、フルトン郡での重複は同じ罪を再度は追及しない「一事不再理」の禁を破ると警告していた。
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