中国のジャパニフィケーション〜にわかに心配される中国経済の今後~
Japan In-depth / 2023年8月29日 17時0分
神津多可思(公益社団法人 日本証券アナリスト協会専務理事)
「神津多可思の金融経済を読む」
【まとめ】
・中国経済の指標が振るわず、「中国のジャパニフィケーション」が心配。
・過剰の解消と人口動態の影響が同時に顕現化なら、中国の課題は日本より大きい。
・中国経済はイノベーションが重要。政策当局、政策面での挑戦迫られる。
最近の中国の経済指標をみると、振るわないものが多い。また、大手不動産会社の経営不振の報道も続く。中国の生産年齢人口が減少を始めて約10年が経過しているだけに、それらの不安材料が、かつて日本で起こった停滞が中国でも起こるかという、「中国のジャパニフィケーション」の心配に結び付いている。
他方、中国当局は、1980年代後半の日本の金融バブルの生成と1990年代のその崩壊の過程を入念に勉強してきたと言われている。したがって、適切な対応がとられ、日本のようにはならないだろうという見方もある。
しかし、中国にしても人口動態を急に変えることはできない。過去30年間の日本経済のパフォーマンスの内、どこまでが人口動態による不可避のもので、どこまでが政策対応の失敗によるものなのか。その点についてはっきりとしたコンセンサスがある訳ではない。
そうであるなら、日本の過去に学ぶと言っても、一体、何をどう学ぶかということになる。また、日本とは政治体制が違う中で、少子化・高齢化の経済的帰結にどう対応するか、中国当局の課題解決能力がいよいよ問われるだろう。
■ 振るわない中国の経済指標
足元の中国の経済指標は振るわないものが多い。4~6月の実質GDPは、前年比こそ+6%を超えているが、前期比年率では+3.2%で、コロナ禍からの力強い回復の期待を裏切るものだった。
物価面でも、7月のCPIは前年比△0.3%と、マイルドながらついにデフレとなってしまった。もちろん、来月以降のことは分からないが、CPIの前年比は2022年後半からその伸びが低下しており、デフレ懸念が生じるのも無理はない。
また、不動産市場も不調のようだ。今年に入ってからの中国の不動産開発投資は、前年に比べ1割方減っている。そうした中で、不動産大手の恒大集団は、8月17日、ニューヨークの裁判所に連邦破産法15条の適用申請を行った。この法律は、外国企業を対象に、米国内の資産を債権者の差し押さえなどから保護し、経営再建を促すためのものだ。同グループの今年1~6月の最終損益は7千億円弱の赤字となった。さらに、別の不動産大手の碧桂園も、今年上期の最終損益は1兆円程度の赤字になるとの見通しを出している。
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