中国のジャパニフィケーション〜にわかに心配される中国経済の今後~
Japan In-depth / 2023年8月29日 17時0分
特に、成長率鈍化への対応として、総需要刺激に力点を置いた場合、いつまでたっても実現できないより高い成長率を追って、財政赤字の拡大、金利の引き下げを継続させることにもなりかねない。日本でもこの点の整理はまだ不十分で、どういう対応が最善だったのか、明確なコンセンサスはない。しかし、規模の縮小が不可避な国内市場と、高齢化に伴い変化する需要の中味に対応して、供給サイド、即ち企業部門の構造変化を進めることが重要だったことは日本の反省点としても言えることだ。
さらに、米中対立の中で、今後はグローバル企業のサプライチェーンの拡充がこれまでとは違ったかたちとなる。これは何も中国だけの問題ではないが、中国からしてみれば、海外からの直接投資で供給力が充実し、それが経済の活性化に寄与するという側面を、これまでと同じに期待することはできない。だからこそ、古くは一帯一路、新しくはBRICSの拡大といったかたちで、日米欧以外の企業との結び付きを強化しようとしているのだろう。しかし、中国の先進企業が、日米欧の企業への追い付き過程を終了しつつあるとすれば、これからの新しいサプライチェーンを引っ張っていくのは中国企業でなくてはならず、したがってイノベーションがますます大事になる。
この点、日本では、今から振り返ってみれば、既存のビジネス・モデルの守りに重きを置き過ぎたところがあったように感じる。これもまた、まだはっきりしていないが、もっと新陳代謝を重視した対応をすべきだったという反省もあるのではないか。こうしたところを、中国はどうみているのだろうか。
■ 中国当局の新しい政策面の挑戦
民主主義の下での議院内閣制度によって諸政策を実行する日本と、一党独裁の政治体制の中国では、置かれた経済環境の大きな変化に対する対応の仕方も自ずと違うだろう。日本では、バブルの崩壊の後始末の過程で、民意の説得に長い時間と大きなコストがかかった。それは、民主主義の良いところであり、個人の自由を確保する上での然るべきコストである。他方、中国ではそうしたコストは表面的にはかからないのかもしれない。
不動産や企業設備、雇用の過剰を解消していく上では、当局が強力な権能を持っていることが時間の節約に繋がることもある。それによって、調整のための総コストが小さくて済むという面も考えられる。反面、一党独裁であっても、あるいはそうだからこそ、民意が大事になるところもあるだろう。特に若年層の失業率が高まっている中で、中国共産党がどういうバランスですでに生じてしまった過剰の解消を進めていくか。注目されるところである。
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