中国のジャパニフィケーション〜にわかに心配される中国経済の今後~
Japan In-depth / 2023年8月29日 17時0分
これらの動きを踏まえ、中国のジャパニフィケーションということもしばしば言われるようになっている。日本の1990年代のバブル崩壊と似たような過程を、今日の中国も辿るのではないかという心配である。不動産や企業設備に過剰があるのであれば、それは結局のところ債務の過剰でもあり、かつての日本との連想が働いても不思議ではない。
■ 1990年代以降の日本経済の含意
しかし、1990年代以降の日本経済に起こったことは、複層的な性格を持っており、一括りに似ていると言っても、それが何を意味するかは実ははっきりしない。
過度な成長期待から、資産価格が上昇し、企業も過剰な生産設備・雇用を抱えてしまったことを指すのか。あるいは、生産年齢人口が減少に転じ、国内の経済構造が変わり、それに対する供給サイドの調整が遅れたことを意味するのか。さらに日本の場合、急速に進展する情報通信革命に乗り遅れ、他方で中国を筆頭に新興国から追い上げられる中で、成長を牽引する新しい有力ビジネスの的を絞り切れなかったということもあった。
今日の中国の不動産市場で起こっていることは、これらの内、最初の供給サイドの過剰の問題に似ている。それへの対処としての日本の教訓は、とにかく過剰解消のためのコストを小さくすることが重要ということだろう。そもそも過剰が生じてしまった以上、それを解消するためにコストがかかることは不可避だが、その初動に失敗すると、累積コストは雪だるま式に膨れる。
日本では、銀行や企業の将来見通しの甘さから生じた過剰を解消するために財政資金を使うことへの反感が大きかった。そのため、初動がどうしても保守的になり、その結果、負担の総額は却って大きくなってしまったところがある。中国は日本のような民主主義の社会ではないので、ここはうまく対応できるかもしれない。
ただ、日本の場合、次に考える人口動態の経済的な影響は、バブルが崩壊してから10年以上が経過してから顕著になった。日本の生産年齢人口が減少を始めたのは1990年代後半だ。今日の中国で、資産価格の調整と人口動態の影響の顕現化が同時に起こっているとすると、その点は日本の場合よりも調整の規模が大きくなる可能性はある。
さて、その人口動態の経済的影響についてであるが、少子化・高齢化・人口減少の帰結として成長率が低下することには不可避の側面がある。その下で、実現しようとする成長率の目線が、実現不可能なほどに高いと、結局、政策対応が徒労に終わってしまう可能性がある。
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