TVで「ウクライナ侵略反対」呼びかけた女性編集者、毒物盛られる?
Japan In-depth / 2023年10月20日 12時41分
樫山幸夫(ジャーナリスト、元産経新聞論説委員長)
【まとめ】
・ニュース放映中に、ウクライナ侵略を糾弾し、その後フランスに亡命していたロシア国営テレビの元編集者がパリ市内で突然倒れ病院に救急搬送。
・生命に別条はなかったが、本人が当初、毒を盛られたかもしれないと話し、後に否定したものの、検察がアパートを捜索。
・真相はなお不明だが、ロシアは過去にも反政府運動指導者や国外に亡命した情報機関員らを毒物で襲撃する事件を起こしており、今回の事件は、冷酷、残虐な事件をあらためて想起させる。
■ 自宅出た直後、意識失い救急搬送
マリーナ・オフシャンニコワさんは10月12日朝、パリのアパートを出たとたんに、気分が悪くなり意識を失った。
病院に救急搬送され、数時間後には快方に向かったが、本人は搬送直後、「ドアノブに白い粉が付着していた。毒を盛られたのかもしれない」などと話した。
後刻、これを否定したが、患者の経歴、仏入国のいきさつなどを考慮した検察、警察当局は、事態を重視、アパートの遺留物収集など捜査を進めている。
■ ニュース放映中にカメラに向かい「戦争やめろ」
オフシャンニコワさんはロシア国営テレビ「チャンネル1」のニュース編集担当者だった2022年3月、ひと月前に始まったウクライナ侵略に抗議して、ニュース放映中にキャスターの背後から「戦争をやめろ。プロパガンダに騙されるな。彼らはうそをついている」などと手書きの大型ポスターを掲げ視聴者に訴えかけた。
罰金刑を科されて職を追われ、7月には政府に対する抗議集会に参加、一時身柄を拘束されたが、その後「国境なき記者団」の手助けによってフランスへ出国した。
23年8月になってモスクワの裁判所は本人不在のまま、軍に対するうウソの情報を流布させた罪で禁固8年半の判決を宣告した。
■ 反体制指導者に神経剤「ノビチョク」
体調回復後、本人が毒殺未遂の可能性を否定したと伝えられることもあって、真相はなお未解明だが、これまで、ロシア国内、欧州では同国が関与しているとみられる毒殺、同未遂事件が起きており、今回も同様の構図ではないかとの疑念が指摘されている。
記憶があたらしい最近の例としては、ロシアの反体制運動指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が2020年8月、航空機内で瀕死の状態に陥った事件がある。
西シベリアのトムスクの空港からモスクワに向かう便に搭乗したナワリヌイ氏は離陸直後から苦しみはじめ、緊急着陸したオムスクの病院に搬送された。
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