重要課題は先送りされた 【2024年を占う!】日本経済
Japan In-depth / 2023年12月25日 11時0分
神津多可思(公益社団法人 日本証券アナリスト協会専務理事)
「神津多可思の金融経済を読む」
【まとめ】
・2024年先進国は金融緩和に向かい、低インフレ・低金利には戻らないだろう。
・日本企業のリスク・テイクを伴う投資はまだまだ出てくるはず。
・第3次産業革命で勝者になり切れなかった日本企業のチャンスになりうる。
2023年ももう終わり。日本で新型コロナが5類に移行したのが5月8日だったので、社会生活という面からは、2023年はまさに平常への復帰の年だった。時期のずれはあっても、それは世界で共通のことだ。
そうしたこともあってか、ちょうど1年前、2022年の終わりに重要課題として認識されていたことの多くは、あまりはかばかしい進捗もなく、そのまま2024年へと先送りされる感がある。1年前の今頃、2023年を展望した一文を書いた。どうもまとまりがなく、自ら没にしたのだが、それを読み返してこの先送り感が強まった。
そこでは、大胆にも「これからグローバル経済がどう動いていくか、予想が外れることを重々覚悟の上で考えてみると、随所に新しいパラダイムへの移行を感じさせる要素がある」としている。今の時点に立っても、その感覚自体はあまり変わらない。
論点1:再び低インフレ・低金利になるのか
1年前の原稿では、「グローバル経済の成長率のスローダウンは避けることはできなそうだ」とみているが、これは当たったようだ。もっとも、その程度は予想外にマイルドだった。先進国はここ久しく経験したことのないインフレに見舞われ、金融政策ではその制御が最優先だったが、それでも著しい景気後退はこれまでのところ避けられている。
米欧の金融引き締め局面はもう終わりという見方がマジョリティになりつつあり、2024年は景気の状況を先取りしながら金融緩和に向かうことになるだろう。そこでなお残る論点は、その結果として、かつてのような低インフレ、したがって低金利に再び戻るのかということだ。この点については、1年前の原稿では「この間のグローバル経済の変化をみると、どうもコロナ禍前のような低インフレには戻りそうもない感じもする」とある。
その理由として、「今後は、米中対立、ロシアのウクライナ侵攻に典型的なように、かつてのような速いスピードでさらにグローバル化が進展するとは思えない。そうであるとすると、需要と供給のバランスで言えば、これまでよりインフレ圧力が強い状態がノーマルになるとも考えられる。そのように定常的なインフレ率の水準が高くなるのであれば、それに対応する金利の水準もまた以前よりは高くなるだろう」と記している。こうした見方の妥当性の検証は、丸々2024年に持ち越されるが、2010年代までのグローバル化にブレーキがかかったということは、新たに起こった中東での紛争によって、よりはっきりしつつあると言えるのではないか。
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